第192話

数日が経ち、サイファー主催のパーティーの日を向かえた。

シュバルツは予定よりも早めに登城する。

いつもお世話になっている執事さんが別室に通してくれる。

「早い到着だな。だが、助かった」

「サイファー殿下。助かったとは?」

「うむ。どうしてもクラウディアがシュバルツのエスコートをすると言って聞かなくてな」

「クラウディア様が?」

「相当にお前のことを気に入ったらしい」

気に入ったというよりは食べ物に釣られているような気もするが嫌われているよりはいい。

「お気持ちはありがたいのですがよろしいでのすか?」

未成年とはいえ、異性のエスコートをする。

それはクラウディアの評判に傷をつける可能性もある。

「本人がやるといっているのだから気にする必要はないさ。それに・・・」

「それに?」

「妹の我が儘を叶えてやりたい」

「兄馬鹿ですか?」

「兄馬鹿で何が悪い?」

「いえ。その気持ちはわかりますけど・・・」

シュバルツもリリアーヌのことは目に入れても痛くない程に可愛いのでその気持ちはわからなくもない。

「まぁ。お前のためにも悪くないと思うぞ」

「悪くないとは?」

「自分の価値に全く気づいていないとはな。父上から目をかけられ私の派閥の一員だと判明するのだ。取り込むために縁談が持ちかけようとする貴族も多いだろう。そこにクラウディアの存在を匂わせれば牽制になる」

「ありがたい話ですが本当によろしいのですか?」

「私としてはお前とクラウディアがくっつくならそれでも構わんのだがな」

「クラウディア様は食べ物に釣られているだけだと思いますけど」

「そういった面はあるだろうが・・・。うむ。私の口から言うべきことではないか」

「???」

「不思議そうな顔だな。歳のわりに大人びてはいるがそういうところは年相応ということか」

肉体年齢はわかくても精神年齢は前世の分もあるのだ。

それに修行部屋のおかげもあってかなりの年月を経験している。

普通の子供と比べて大人びていても不思議ではなかった。

「そうだった。渡すのを忘れるところだった」

そう言ってサイファーはマジックバックから皮袋を取り出す。

「これは?」

「私と父上からだ。前に剣とワインとかジュースを貰っただろう?その返礼ということだな」

「気にしなくてもよかったのに」

「そういうわけにはいかないさ。素晴らしい品には相応の対価が必要だ。その代わり定期的にワインとジュースを頼む」

「本音はそこですか・・・。まぁ、まだまだあるからいいんですけど」

修行部屋の倉庫区画には消費しきれないほどの物資が貯まっている。

これぐらいで喜んでもらえるならいくらでも提供しても問題なかった。

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