第157話

シュバルツは修行部屋にて新たな試みをしていた。


それは、魔道具作りである。


恩恵ポイントを消費して魔道具作りの入門書を入手した。


今は初歩的な水を生成できる魔道具を試作している。


使っている素材は魔鉄だ。


無名の鍛冶に作り方を教えてもらい、自分で用意した。


いくつか魔鉄の作り方はあるそうだが、今使っている魔鉄は銅に魔石を専用の道具で砕いて製鉄している。


銅はいくらでも手に入るし、魔石は大量に余っている。


練習に使う魔鉄としてはこれで十分だ。


魔鉄に慎重に魔法陣を刻んでいく。


だが、これが中々に難しい。


少しでも歪んだりずれるだけで、魔道具としての質が著しく低下する。


何度も失敗しながら、何とか1つ完成させた。


作った魔道具に魔石をセットして使ってみる。


すると魔道具からはちょろちょろと水が出る。


成功は成功だが、これなら魔法を使った方がよほど早い。


その後もシュバルツは、諦めることなく、魔道具作りを続けた。


その成果は少しずつ現れて、水の量は少しずつ増えていた。








フラン、ミミ、シズノ、マリル、レベッカの5人はワームの森の2層にやってきていた。


1層のワームは白のシルクしか落とさなかった。


だが、2層のワームは赤、青、黄、緑など、色のついたシルクを落とす。


シュバルツは何やら作業をしているので、この時間に出来る限りのシルクを集めようと女性陣はやる気に満ちていた。


連係してワームを次々に狩っていく。


1層のワームよりは2層のワームは強くなっているのだが、この程度では女性陣はとまらない。


休憩を挟みつつ、大量のシルクを手に入れることに成功した。


そのままの流れで工房区画に向かう。


それぞれ思うままに好きな物を作る。


城の使用人達の分も作るのは忘れない。


基本的に異空間で手に入れた物を外に出すのはダメということになっているが、市場を混乱させなければいいとシュバルツにも許可を取っている。


普段お世話になっているのだ。


これぐらいはしてもいいだろう。








シュバルツは魔道具作りに一区切りつけ、女性陣の様子を確認する。


全員、目が真剣だ。


これは邪魔しないほうがいいだろうとその場を後にする。


時間の出来たシュバルツは軽く運動しようとオーク村へ向かった。


ある程度、オークを狩ったところでクロから念話が届く。


どうやら女性陣の作業が終わったようだ。


シュバルツは女性陣と合流して通常空間に戻った。


全員から刺繍のされたシルク製品を受け取り、お礼を言うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る