第2話

ガタゴトと整備された道を馬車が進んでいく。


思ってみればこの5年、住居である城から出たことはなかった。


窓から外を見れば中世ヨーロッパのような建築様式の建物がずらりと並んでいる。


父であるシュタイナーと母であるマリアンヌは楽しそうにおしゃべりしている。


父であるシュタイナーには多くの奥さんがいる。


政略結婚なども多かったらしく夫婦仲がよくない相手もいる。


母は平民の出で城では他の奥さん達に目をつけられないようシュタイナーと話す機会は少なかった。


こうして他の奥さん達に遠慮なく話せるタイミングというのは貴重なのだろう。








馬車が立派な建物の前で止まる。


建物の前には司祭服を着たお爺さんやシスターが綺麗に並んでいる。


従者が馬車の扉を開き父であるシュタイナーがまず降りる。


母であるマリアンヌと共にシュバルツも馬車を降りた。


「公爵様。本日はよくおいでくださいました」


「うむ。今日はシュバルツのことを頼むぞ」


司祭に先導される形で建物の中に入る。


キョロキョロ見渡してみれば柱などにも綺麗な彫刻が入っている。


礼拝堂と思われる部分に入ればさらに圧倒された。


天井には綺麗な絵が描かれステンドグラスからは暖かな光が入っている。


さらには神様と思われる像がいくつも並んでいる。


その中の1つを見て驚いた。


生と死の狭間の空間で見た猫耳の美少女の像もあったのだ。


薄々気づいていたことではあるがあの猫耳の美少女は神様かそれに近い存在なのだろう。


「それではシュバルツ様。どうぞこちらに」


司祭に促され壇上になっている部分に移動して祈りを捧げる。


すると光に包まれて意識が飛んだ。








「久しぶりだにゃ」


目の前には猫耳の美少女が椅子に座り紅茶を飲んでいる。


「ここは・・・?」


「私の領域だにゃ。設定不足があったから呼んだのにゃ」


「設定不足ですか?」


「恩恵のカウンターにゃんだけどにゃ。最初に何の数を数えるのか設定するのを忘れてたのにゃ」


猫耳美少女がそう言うといくつものパネルが表示される。


歩数計。


素振り。


魔物の討伐数。


などなど・・・。


様々な物を設定できるようだ。


子供の体で出来ることに設定するのがいいだろう。


「では、歩数計でお願いします」


「わかったのにゃ。たまに神殿にお祈りにくるのにゃ」


神殿に来ればまたこうやって会えるということだろうか?


「わかりました」


「ではでは時間もにゃいからまたにゃ」


意識が遠のき神殿で祈りを捧げているところだった。

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