歩くだけで最強?僕の恩恵がカウンターだった。

髙龍

第1話

西山輝幸は今日も一人虚しく歩いていた。


何件もの会社の面接を受けたがこの日も受かることなく肩を落としてアパートへと急ぐ。


そんな時、目の前を黒猫が通り過ぎた。


黒猫の進行方向から明らかにスピード違反と思われる車が迫っている。


黒猫を助ける為に体が自然と動き車の前に飛び出していた。


ドンと激しい音がする。


全身が痛い。


意識が急激に遠のいていくのを感じる。


だが、助けた黒猫の温もりを確かに感じていた。








気が付けば真っ白な空間に漂っていた。


「やぁ。目が覚めたかにゃ?」


そう言って話しかけてきたのは猫耳を生やした美少女だ。


「ここは・・・?」


「死と生の狭間だにゃ」


「僕は死んだんですか?」


「そう。私を助ける為に君は死んだにゃ。だけど君には私を助けるという善行から新しい人生をプレゼントしてあげるのにゃ」


彼女がそう言うと頭の中に知識が入り込んでくる。


剣に魔法のファンタジー。


魔物がうようよしている危険な世界だ。


「君には特別に恩恵を選ぶ権利をあげるにゃ」


そう言って様々なスキルや称号と言った情報がパネルに表示され現れる。


きっと新しい人生を決める重要な選択だ。


じっくりと全てのスキルや称号に目を通す。


その中で目を引いたのはカウンターというスキルだった。


一定の行動を繰り返すことでポイントが貰え、能力値やスキルと交換できるというものだ。


「本当にこのスキルにするにゃ?」


「えぇ。これにします」


「わかったのにゃ。でも、おまけしてあげるのにゃ。1万回繰り返さないといけにゃいところを1000回にしてあげるのにゃ」


1万回が1000回になるのは大きい。


「ありがとうございます」


「そろそろ送るにゃ。いい人生を過ごせるように祈ってるのにゃ」


猫耳少女がそう言うと意識が遠のいていった。








「シュバルツ様。いよいよですね」


「うん」


僕はシュバルツ・フォン・クロイツェンとして新たな生を受けた。


クロイツェン公爵家の10男として生れ落ち5歳の誕生日を迎えた。


この世界では5歳になると教会に赴き恩恵を授かるのだ。


恩恵のもたらす効果は大きい。


剣聖や賢者の称号を授かれば将来安泰とさえ言われる。


何の恩恵を授かるか知っているためその楽しみは半減ではあるがこの日が待ち遠しかったのは間違いない。


いつもより豪華な服を身にまとい公爵家の馬車に乗り込む。


馬車の中には父であるシュタイナーと母であるマリアンヌが先に乗り込んでいた。

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