情けない幼児パンツ

「まあ、何時もの事だから大丈夫でしょ?」


「うーん、まあ、そうねぇ……」


 それでいいのか。

 そう思って美琴さんを見る。


 ……改めてみるとなんていうか、凄い情けない恰好だな。


 まるで後転途中で止まったかのような態勢で固まり、スカートがめくれ上がり幼児パンツが見えている。


 ……パンツ見えてる?


 俺はそっと目線をそらした。


「美琴ちゃん大丈夫……だめね、返事がないわ。まるで屍みたいね」


 不謹慎すぎるだろ。


 そう、俺が思わず心の中で突っ込んでいると雫さんが、まるで医療ドラマの医者のように手を構え……「ふっ」と不敵に笑った。


「ここは私に任せて」


 そう言うと雫さんはしゃがみ込むと、その手をビシッ美琴さんの脇腹へ伸ばし……


「たぶんこうすればいい……こちょこちょー」


 そう言って指先を動かした。

 ……何だろ、凄い可愛い。


 俺が何故か、ほっこりとしながらその光景を眺めていると、美琴さんが「ぶほっ」と息を吹き返した。


「ぶほっ、な、なにが!っ……ふっ、わははははは! ちょ、やめろっ。何々何!?」


「あ、起きた」


 そう言うと雫さんは指を止めた。


「お、お前……なに、何やってんの。本当、マジで……笑い死ぬかと思った」


 そう言って服を乱して、「はぁはぁ」と息を吐き、スカートがずり落ちかけながら息も絶え絶えなった美琴さんは大の字になってそう言った。

 

「まったく、手間かけさせて」


 そう言って雫さんがムスッと目を細めてそう言うと……


「お前のせいで私ひどい目にあったんだが!?」


 美琴さんはすかさずそう言って突っ込んだ。

 まあ、確かに雫さんのせいだから……もっともである。


「まあ、気にすんな」


「気にしろ!」


 そう言うと深いため息をつき「まあいつもの事だから良いけどよ……」と美琴さんは言った。


 ……いいのか。


 っていうか何時もの事って、こういうことが毎回起こってんのか。

 そう思った俺は雫さんと美琴さんの二人を見た。


 ……よく友達関係続いてるな。


 思わず感心してしまう。


 そう俺が思っていると雫さんは「あ、そう言えば」と言って俺たちを見て首を傾げた。


「二人とも……何で家にいるの?」


「え、えっと……あ、そうだ」


 そう言って俺は持っていた袋を出した。


「何ていうか、その……」


「お前が風邪ひいたって聞いたからな、お見舞いに来たんだ」


「ん……そう、そのありがとう」


 そう言って雫さんは顔を赤くしてそう言った。


「これは、お見舞いの品……です」


「二人ともありがとうね」


 そう言って俺が渡した袋を雫さんが受け取ると、袋を開けて中を見て……そして手を突っ込むみ……


「バナナだっ‼」


 そう満面の笑みでバナナを掴み取った。

 ……何だろ、何故か馬鹿っぽく見えるのは気のせいかな?


 そう思っている俺の前で雫さんはバナナの皮をむき……


「……うまうま」


 そう言って雫さんは、バナナを舌で嘗め回して、ペロペロと舐めながら抜き差しして食べ出した。


「はぁ……はぁ、凄いおっきぃ」


 そう言ってバナナを舐め回す雫さんは……何だろう、凄いエッチィ。

 思わず俺がそんな雫さんの様子を見ていると、俺の視線に気が付いたのか、雫さんは俺を見た。


「ん? ……食べる?」


 そう言って雫さんは食べかけのバナナを差し出してくる。


「え、いい……い、いやダイジョウブデス」


「ん、そう……あれ? まだ何か入ってる」


 そう言って、雫さんは袋を触り、バナナを加えたままもう一つの品を取り出した。


「これは……昆虫ゼリー?」


「なんか、美琴さんが雫さんが好きって言ってたから……」


「ふ、私はお前の事なんでも知ってるからな、お前が昆虫ゼリーが好きだってのはもちろん知って……」


「……別に私、昆虫ゼリー好きでも何でもないけど」

 

 そう言って雫さんはジト目を美琴さんに向けたのだった。

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