日曜日とパンツの写真
「まさか、まさか兄ちゃん……」
「い、いや遥これには海より深いわけが……」
「兄ちゃんも女装に目覚めたんだね!」
……へ?
女装に目覚めた。
「っ……そ、そう! そうさ! 俺も女装に目覚めたんだ」
「そっか! ふふふ、兄ちゃんよくわかってるじゃない」
「わ、分かってる?」
「え? だって、本格的に女装するためには下着も女の子の物にするでしょ?」
そうさも当然のように言われて、俺はしどろもどろになる。
「そ、そっか……い、いやーそうだよなー……あはは~」
そう言う物なのか?
「そうだよね~……いやー女の子の服っていうのはさ~……」
そう言って遥は体をくねくね揺らしながら女装について話し始める。
「そうなんだー」
そう言って俺は乾いた笑いを顔に張り付けた。
……ヤベェ、早くボロが出る前に話題そらそう。
なんかないか?
そう思っていると、お味噌汁のいい匂いが俺の鼻をなでた。
「……っ」
これだ!
「そ、それより。なんかいい匂いがするね? 朝ごはん出来てるのか?」
そう言うと、くねくねと体を揺らしていた遥はハッとした顔になった。
「あ、そうだった。朝ごはん出来たから兄ちゃんを呼びに来たんだった」
そう言ってポンッと手を叩いた。
「そ、そうなんだ~。だったら早くご飯食べに行こうか~」
「うん! あ、今日は父ちゃん母ちゃんいないからボクがご飯作ったんだよね~」
そう言って遥は「ふふふ」と口元を抑えて笑っていた。
「それじゃ、冷めないうちに食べないとな!」
「そうだね~」
そう言って俺は、どうにかこうにか女装の……パンツの話から話題をそらすことができた。
これにて一見落ちゃ………
「……あれ? でもなんでパンツしか持ってな――」
「あー今日の朝ごはんは何かなー、楽しみだなー」
それ以上言うな、辞めろ。
ボロが出る。
◇◇◇
リビングに着くとそこには一般的で健康的な和食朝ごはんが置かれていた。
魚、みそ汁。ご飯に海苔……
まるでホテルの朝ごはんで出てくる料理みたいだ。
……遥、女子力高いよな。
「ん? なんだ?」
「ちょっと、兄ちゃん行儀悪いよ」
「あ、わりぃ……ん?」
そう言いつつもスマホを開くと雫さんからメッセージが送られてきていた。
「しっ……」
「し?」
ヤバい、今思わず名前出しそうになった。
ただでさえパンツが見つかったんだ、もしここで雫さんの名前を出せば……きっと遥は答えにたどり着くだろう。
あれが俺のではなく女の子から貰ったものであると……いや、そこまで考えが回るだろうか?
ふと、遥の目を見ると身体がビクビクと震えた。
……まあ、隠しておいた方が良いかもな。
ふと、背筋に冷たいものを感じ俺はそう思ったのだった。
「い、いや……なんか……そ、そう。推しのコラボ発表? を見ててな、ちょっと驚いたんだ」
そう言うと、遥は少しいぶかしんだ後「そっかー」と言って笑顔になった。
……ふぅ、なんとかごまかせたか。
「あ、でもご飯食べるときはスマホを仕舞いなよ~」
「分かった分かった……でもこれだけ確認させて……」
そう言って俺は味噌汁を飲みながら雫さんのメッセージを確認し……
「ぶふっ……⁉」
その瞬間、俺は思わず飲んでた味噌汁を噴出した。
「ちょっと! 兄ちゃん汚いよ!」
「すまんすまん。ティッシュ……ティッシュ」
そう言って俺は、噴出した味噌汁を拭きながら心の中で突っ込んでいた。
……いやいや、雫さん流石にこれは予想外過ぎるって。
そう思い、俺が改めてLINEを見るとそこに写っていたのは……
『今日のパンツ……写真でごめんね』
そんな言葉と、リボンがついた白色のパンツの写真だった。
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