家族にパンツばれ?

 朝目覚め、カーテンを開ける。

 朝日が眩しく、気持ちいい。

 ふと外を見ると、身体を動かしている人もいる。


「……さて、今日は何するかな」


 昨日は雫さんと一緒に、ででで、デートではないけど、それっぽい感じのことした。

 俺は、未だに残る彼女の感触を感じて腕を見た。


「考えてみれば昨日ずっと雫さんと腕を絡めたり手を握ってたんだよな……はっ、もしかして雫さんって俺のこと好き……」


 そう考えて、俺は小さく笑った。


「いやいや、ないない。そんなわけないよな……きっと」


 好きだったら血涙流すほど嬉しいけど。


 そう思いながら俺はベッドの下の収納を開き……底板を取り外して、そこに隠してあった雫さんのパンツを手に取り鼻に当てその匂いを堪能する。


 雫さんの匂い……まあ、洗ってあるから彼女の匂いはしないんだけど、想像の中で彼女の匂いという物を感じることができるのだ。


 くんくん、すーはー……

 

 やはり素晴らしい、女の子の柔らかいにおい、甘いにおい、そしてエッな……


「いや、俺何してんだ」


 そう言って俺はパンツを持って正気に戻った。

 いや本当に。


「まあ、とりあえず一発抜いて……」


 そう言って俺がパンツを持って立ち上がった時、部屋の扉がギギギと開いた。


「兄ちゃん……何してんの?」


「うわっ……ハルカッ⁉」


 すぐさまパンツを隠し、収納箱を蹴り閉める。

 

「……何してんの?」


「い、嫌なんでもないさ」


 そう言って俺が振り返るとそこには地雷系の黒髪の美少女がいた。


 腰まで長い黒髪ストレート、手足は細く、肌は色白。

 服は甘々ゴシックロリータ、見た目はまさに地雷美少女………まあ、こいつ男なんだけどな。


「……ねえ、何してたの? 兄ちゃん」


 そう言って俺の顔を覗き込んでくる少女……男の娘。

 

 整った、アイドルみたいな顔で迫ってきて、少しドキッとしてしまう…………いやいや、こいつは男だ。男だよな?


 実の兄ですら、たまに自信が持てなくなるくらい女の子にしか見えないがこいつは男なのだ。


 こいつの名前は佐藤 遥。俺の実の弟である。


「だから何でもないって」


「……怪しい」


 そう言うと遥はその小動物みたいな顔で俺のことをジト―っと見つめ……


「怪しい……」


 そう言って遥は俺に近づくとスンスンと鼻を俺に押し付けた。


「お前、何してんだよ?」


「兄ちゃん……女の匂いがする」


「ふぇっ!?」


 お、女? 女の匂いって……まさか、まさか……




 




「……ねえ、誰? 誰?」


 俺が冷や汗を流していると、遥はそう言って俺の顔に少しづつ……少しづつ自分の顔を近づける。


 ヤバい……まさか、まさか家族にバレるなんて。

 いや、まだ疑ってるだけか?

 

 ……よし。疑ってるだけだとしたら、まだ俺は助かるチャンスがある!


「ねえ……誰の匂い……」


「な、何でもねえ! ただの誤解だから! と、ととと、とりあえず兄ちゃん今から着替えるから‼ ねっ⁉」


「あ、ちょっと……」


 そう言って俺は遥を自室から追い出して、鍵を閉める。

 何処か不満そうにしていたが、そんなの関係ない。


「……ふぅ、とりあえず早く。これ隠さないと」


 そう言って俺はパンツを持って、収納を開けた。


「とりあえず畳んで、後は……よし、これで万事……」


「兄ちゃん、それって……」


 そう言って俺がパンツを仕舞おうとした時……俺の背後から声が掛けられた。

 遥の声……しかし、俺は遥を部屋から追い出し……そして、鍵を閉めた。 締めたはず……だから、遥の声がするなんてことは無いはずなんだけど?


 そう思い過呼吸になりながらゆっくりと振り返ると、そこには顔を赤くして立つ遥の姿があった。

 遥はしゃがみ込む俺の後ろに立って……ポツリと呟く。


「ねえ、それって……女の子のパンツ…………」


「ぎゃあああああ⁉」


 こうして俺は、女の子雫さんのパンツを持っていることが家族にバレてしまったのだった。

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