パンツのお返しに……違う違う

  学校を出て、俺は近くのドン●へと向かう。

 いく理由は一つ、全ては雫さんのお見舞いの品を買うため。


 何時もパンツを貰ってるんだ、パンツのお返しに……違う違う。


 パンツ関係ない。 

 うん、パンツ関係ないよ。


 そう俺は首を振って、正気に戻る。


 ……正直、コンビニでもいいとは思うが、商品はスーパーの方が多いからな。

 いろいろな商品を見て、お見舞いの品を決めよう。


 そう、思って来たはいい物の……


「俺、雫さんのことやっぱり何にも知らねえんだなぁ……」


 そう言って、数多の商品が並ぶ棚の前で途方に暮れていた。

 何がいいのか……さっぱりだ。


 教えてくれ……雫さんが好きな物、いつも食べている物……ゼロは俺に何も言ってはくれない。教えてくれ、五飛。


 なんて思わず、映画のセリフを思い出して悩みながら、店内を物色していると見覚えのある小さい子……もう分かるな? 


 美琴さんがそこにいた。


「どうしたんだ?」


 そう思って眺めていると、彼女は周りを警戒するように見渡している。

 まるで誰にも見られたくないとでも言うかのように……


「って、あそこ……」


 俺が気になって美琴さんがいる場所を見ていると、そこにあったのは大人なエッチなコーナーだった。


「……まさか、な。あ、入って行った」



 ……それから数分後。


「いやー凄いな、大人の玩具って……」


「なんかよさそうなものあったのか?」


「ああ、そりゃもう……ギャぁ⁉ おま、ま……」


 のれんをくぐって現れた美琴さんに俺が声をかけると、彼女は真っ赤な顔で目を見開いて固まったのだった。



◇◇◇


「は、ほーん、なるほどー……雫のお見舞いの品を買いに来たんだなー」


「そうだね」


「そうか~……そ、それでさっきの事はその……」


「大丈夫、誰にも言わないから」


「そ、そうか」


 そう言って美琴さんはホッと胸をなでおろす。


「……んだよ」


「いやー……美琴さんって、結構エッチなおもちゃが気になって………」


「ばっ、声デカいって」


 そう言って彼女は俺の口を塞いでくる。

 ……別にそんなに大きな声出してないと思うけどな。


「誰も聞いてないっぽいな……ほっ……」


 そう言うと美琴さんはホッと無でをなでおろし、俺をキッとにらみつけた。



「てめぇ、次言ったら、殺すからな」


 彼女はそう言って威嚇する……が、その姿はまるでアリクイの様で全く怖くなかった。


「はいはい」


 ……あ、そう言えば美琴さん雫さんと付き合い長いんだよな。

 そう思った俺は、ふと美琴さんに雫さんが好きな物に尋ねてみることにした。


「雫が好きな物?」


「そう、なんか知らない?」


「そう言われてもなぁ………よっと、えっと、エイッ……」


 そう言って美琴さんは棚の上に手を伸ばす。

 背筋を伸ばし、つま先立ちし、飛び跳ねて……しかし悲しいかな、あと少しの所で届かない。


「……取って」


「分かったよ。はい」


 そう言って手渡すと美琴さんはキラキラした目を俺に向けた。


「ありがとな!」


「どういたしまして」


「で、雫さんの好きな物なんだけど……」


「あーあいつが好きな物かぁ……うーん」


 美琴さんはうーんと唸り、首をかしげてぽつりとつぶやいた。


「バナナと昆虫ゼリー?」


 ……虫?

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