何時ものようにパンツを受け取る……

 放課後が訪れ、俺はいつものようにいつもの場所に来ていた。

 何時もの場所で、何時ものようにパンツを受け取る……


「……あ、そうだ今日雫さん休みだった」


 俺はそう言うと、頭を叩いた。

 ……まったく、俺って奴は。


 そう思い俺はいつもの場所から立ち去る。

 思えば、雫さんにパンツを渡されるようになってまだ数日しかたってないのか。


「……それなのに、俺の行動って日課になってたのか」


 そんなことを思い、廊下を歩く。


「そうだ……やっぱり行こう。うん、何がいいのか分からないけど」


 そう呟きながら教室についた俺は、置いてあったカバンを手に取り返ろうとする。


「おい、お前」



 その時、誰かに声をかけられ、振り返るとそこに立っていたのは晴間だった。

 「……な、何?」


「お前、雫に何をした?」


「は、何って……何もしてないけど」


 そう言って晴間は何故か鬼のような怒り顔で、俺に詰め寄ってくると……。


「とぼけるなっ」


 ダンッと俺の机を揺らす。


「雫は俺のことが好きなはずだ、なのにただのモブ中のモブのお前が俺より先に連絡先を交換してただと? ふざけるな‼」


「な、何を言ってんのさ?」


「良いか? モブ野郎。この学校の女は俺の物だ、特に美少女はな」


「は、はぁ⁉ お前、それマジで言って……」


 正気じゃない発言……そう思った俺は、ふと視線を感じ、晴間の後ろを見た。

 すると、彼のハーレムの女たちが俺達のことを見ているのが見えた。


 女たちは晴間に熱烈な目線を向け、俺のことを睨んでいる。


 ……なんでだろ。

 その光景を見るだけで、何故か俺の頭はスーッと冷静になる。


 俺は冷静になった頭で何故か目の前で激昂している晴間に問いかける。


「……何を言いたいの?」


「何を言いたいか……か、君みたいなモブにも分かりやすく言おう。今すぐに、雫とかかわるのを辞めろ」


 そう言うと晴間は俺を睨みつけて来た。


「彼女は、まさにSSR級の美少女だ。彼女の隣に立てるのは、君みたいなモブじゃない。俺みたいな天に選ばれた、まさに主人公である俺みたいな存在だ。だからこそ、君に言いたい。今すぐ、即刻彼女とかかわるのを辞めろ」


 そう、ワーワー言われた俺は、思い切り首をひねった。


「……どういうこと?」


「は、これだからモブは……いいか? お前みたいなモブが彼女の隣にいると、彼女は不幸になる。彼女は俺みたいな人間の隣にいるべき人なんだよ。だから黙って……」


「まったく意味が分からん」


 俺はそう言うと、晴間に問いかけた。


「君の主張は……一応分かった。つまり、俺以外が雫さんと関わるなって………要は嫉妬だろ?」


「違う、もっと高尚なっ……」


「違わないさ、君の主張は」


 俺はそう言うと、冷めた目で晴間を見た。


「君は雫さんにとって何なの?」


「は? そりゃ、恋び……」


「違うだろ? 雫さん言ってたよ、君は埃って。私に絡んでくる塵、埃……ゴミみたいな奴だって」


「ご、ゴミだと!? そんな、雫がそんなこと言うわけないだろ?」


「そう思いたいならそう思えばいいけど……事実だからね」


 俺はそう晴間に言うと、笑みを浮かべる。

 その笑みを見た、晴間は怒りのままに俺に尋ねて来た。


「ならお前は一体雫にとっての何だ!?」


「友達……違うな」


 パンツを渡されるのが友達?

 そんなこと、きっとない。ただの友達が、パンツを渡されるなんてことは……きっと。


「……それ以上の関係とでも言えばいいのかな?」


 パンツを渡される関係って意味だが。


「は? 友達以上……」


「まあ、そう言うわけだから、それじゃ」


 そう驚く晴間の前から俺はため息をついて立ち去ろうとする。


「おい待て、話はまだ」


 そんな俺の肩を、晴間は掴んだ。


「放してほしい、俺は……行く場所があるから」


 そう言うと、晴間の手を払って教室の出口へ歩いていく。


「あ、そうだ。一つ、君に言いたい」


 教室から出る前、ふと俺はそう言って振り返ると……


「お前、可愛そうなやつだったんだな」


 晴間にそう言った俺は教室から出て雫さんの家に向かうのだった。

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