ノーパンと招待

 


 ……落ち着け。

 俺、落ち着け、下半身。


 ……素数を数えて落ち着くんだ。

 いや、素数なんて知らねえよ。


 そう言えば、雫さんって今パンツ履いてないんだよな。

 いや、違う違う。そんなこと考えるな。


 落ち着け俺の……。

 

 そんなことを考えて彼女を見ていると、彼女はこてんと首をかしげて訪ねて来た。


「ん、ねえ……家に来る?」


「へ? 雫さんの家に?」


「うん……来る?」


 そう尋ねられたら、答えは決まってる。


「行かせていただきます」


 そう言って俺は即答した。


◇◇◇


 カバンを持って、俺は雫さんと共に歩いていた……手をつないで。

 ふと何故か視線が刺さっているのに気が付いた俺は、周りを見渡せば部活している男子たちの視線が集中しているのに気が付いた。


 なんか血走ってるような、気のせい……じゃないな。これが殺意の波動という奴か? 奴なのか?


「……どうしたの?」


「い、いや……なんか視線がなーって」

 

「そう……それよりも」


 そう言って雫さんは体を寄せて、腕を組んできた。


「……もっと近寄って」


 そう言われ、俺は雫さんの体にぴったりとくっつく。


「あ、ちょ……」


 ふにっ、と、柔らかくも反発する感触がして俺の顔は「カーッ」と赤くなる。

 そ、そこ……雫さんのおっぱ……


「どうしたの? ……もしかして、私のおっぱいに興奮した?」


「い、いやそんなんじゃなくて……その」


「……なに?」


 そう言って彼女は何処か不満そうな顔になった。


「……やっぱり爆乳の方が良いの?」


 いやなんでそうなる!?


「いや、そうじゃなくて……えっと」


「そうじゃないなら……何? 私、十分おっきいなって思うけど?」


 まあ確かに、十分大きくて柔らかいです。はい。

 普通? 普通の大きさっていうのか?

 大きくもなく、小さくもなく。

 健康的に大きい……みたいな感じ?


 ……いやまあ、他の人のおっぱいの感触なんて……あ、一応遥はあるか。前に一回感触を確かめてくれってお願いされて……って違う違う⁉ あっぶねぇ、あいつ女の子っぽいから忘れてたけどあ、あいつ男だ。


 うん、他の人(女の子)のおっぱいの感触は知らないね。


 そう混乱しかけた頭でそんなことを考えていると、不満そうだった雫さんは何かが思いついたようにニヤニヤし始めた。

 

「……むぅ……あ、そういう」

 

「え、あ……」


「……ん、恥ずかしいの?」


 は、恥ずかし……!? いや、恥ずかしいですけども!?


「……ん、そんな恥ずかしがらなくていいのに」


 そう言われてもなぁ……

 ってか雫さんは恥ずかしくないの?

 こんなに見られて。


 そう思ってちらっと後ろを振り返ると、運動部の男たちがハンカチを噛みしめていた。


 やべぇ、これ明日死んだかな?


 そんなことを考えていると足が止まっていたのか、雫さんから引っ張られた。


「早く、行こ?」


「え、うん……」


 そう言って俺はまた、雫さんのおっぱいに触れる。ふにふにで……好き。


「……恥ずかしがらないで、いいから」


「あ、あはは~」


 そう雫さんから言われて困った俺は、ただただ明後日の方を向いて乾いた笑いを漏らすだけしかできなかったのだった。

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