パンツを渡された後にしゃがむのは……

 次の日、次の日と……何時もの場所、何時ものように俺は彼女にパンツを渡される。

 風邪に揺られてはためくパンツを見てると、やっぱり青春だななんて……


「思うわけが無いんだよな」


「ん、どうしたの……急に?」


「あ、いや……何でもない」


 ――いや、本当。

 冷静に考えると、変なシチュエーションだよ。

 もっと青春ってほら、こう、綺麗な感じじゃないか?


 例えば……女の子の家に遊びに行くとかさ?


 俺の青春って、今の所、パンツを渡されるだけ。

 いや、分かってる。 

 分かってるとも、贅沢な悩みだという事くらい。


 だけど思うのだ、もっと青春っぽいことしたいかなって。


「……ねえ、あ、あのさ。なんか、こう……青春っぽいことしない? なんていうか、さ」


 気が付けば俺は、そう声に出して雫さんに言っていた。

 ……い、いや。何!? 青春っぽい事って何~⁉

 もっと具体的なこと言わなきゃ。

 けど、なんて言えばいいのかな?


 わかんねえよーー!


「青春っぽい事って何?」


 ほら! 雫さんも呆れて……て、なんか顔赤くなってね?


「青春っぽい事って……も、もしかして、デート? みたいな?」


「え?」


「あ、違うか。いや違うよね。まだ私たち恋人じゃないし、いや、まだじゃなくて……あう」


 ……こうだ。

 最近彼女は、何故かやけに顔が赤くなりやすい。

 何故だ?


 もしかして、調子が悪いとかだったりするのか?


「ねえ、大丈夫? 熱とかあるんじゃ……」


「違う、違う……熱とかない」


 そう心配になって声をかけるが、彼女はすぐさま否定した。


「え、でも顔が凄く赤くなってるけど?」


 俺がそう言うと彼女は俺に上目遣いして、小動物みたいに頬を膨らませた。


「貴方が、変な事言うから……」


「へ、変な事?」


 もしかして、青春っぽいことしようって……こと!?

 いや、でも確かに言葉としては変かもしれないけど、変な事かな?


「……デートって言うから」


 ……違った。青春っぽいことしようじゃなかった。

 ――ってか待って? デート?


 デートって、俺が行ったんじゃなくて……


「それ、雫さんが言ったことじゃ?」


「え? 私が言ったの?」


「うん」


 俺がそう頷くと、目を丸くさせていた彼女の顔は見たことない程赤く染まっていき……


「……恥ずかしい。いろいろと、恥ずかしい」


 そう言って顔を抑えてしゃがんだ。


「あ、あの……雫さん本当どうした……ッ」


 そんな雫さんが心配になって声をかけようとした俺は、あることに気が付き腰をかがめたところでピタリと止まった。

 

 俺のポケットには今日貰ったパンツが入っている。

 パンツが俺の手元にあるという事は……今雫さんは。


 ノーパン!?


 真理にたどり着いた俺は、スッと彼女の目の前に回り込み下をチラ見しながら彼女に声を……


「……変態」


 かける前にそう言って、雫さんは俺にジト目を向けた。


「見たいの?」


「え、あ、いや……別にそう言うのじゃなくて、ただ雫さん大丈夫かなって………あはは」


 そう言って俺は立ち上がって頭をかいた。


「……変態」


 そう焦ってごまかそうとする俺は、雫さんからもう一度ジト目を向けられ……


「クスッ……変態さん」


 そして最後に耳元でささやかれたのだった。

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