私のパンツ『エッチ』じゃない?
そう言った瞬間、俺は目の前がカァっと赤くなった。
いや、俺何言ってんだ!?
『パンツはエッチなのかな?』
って、エッチに決まってるだろ?
っていうか、なんで行っちゃうんだよ⁉
明らかにアウトだろッ!
やばい、社会的に死ぬかも……それに、絶対引かれてる、美琴さんにも……雫さんにも。
いや、ぶっちゃけ美琴さんはどうでもいい。
問題は雫さん……引かれてないことを祈りながら、ちらりと見たが恥ずかしがっているだけで引いてはいないよう。
ほっ……よかった。
これで俺は救われ……救われてねぇよ!
流れで美琴さんに目線を向けると、彼女はポカーンと口を開けた後、こてんと首を傾げ……
「お前何言ってんだ? パンツはエッチだろ」
「あ、ああ……うん、そうだよね。うん」
「お前何当たり前なこと言ってんだ?」
そうきょとんとした顔で美琴さんは「ぽえ~」と尋ねてくる。
……うん、どうやら今の発言がどういった意味を持っているのかとかはこの子の頭じゃ深読みできないみたいだ。
良かった。
そう、うんうんと頭の中で唸っていると、雫さんが「ぽかん」とする美琴さんの頭から話題をそらしてくれた。
「ん……そうだね。当たり前のことだね。その……それで、美琴はどうして私を探してたの?」
雫さんナイス。
そう雫さんが訪ねると、美琴さんは少し考えた後、うーんと腕を絡ませて唸った。
「……いやー、なんていうか何時もみたいに雫と一緒に帰ろうかなって思ってたんだが……今日はやめとくぜ」
「……そう」
「二人の間に入るのはあれだしな……まあ、うん……そういうことで、それじゃあな!」
そう言って、走り去っていく。
「二人の間に入るのもあれって、どういう事だろうね」
「ん、それは……そう言う事でしょ」
そう言ってヨチヨチ歩く美琴さんを見ながら、俺達の体温は上がって行った。
なんだか、今日はやけに顔が熱くなるな。
「ねえ」
「な、何、雫……さん?」
「……私のパンツ『エッチ』じゃない?」
「え、いや……そんなわけ……」
「そんなわけ?」
「あるわけないでしょ…………」
むしろ、エッチすぎて困ってるくらいだし……
「っ……そう」
そう言って、雫さんはちょんちょんと俺の服の脇腹当たりの服を引っ張った。
「一緒に帰ろう……」
「うん」
「それで、明日は一緒に学校に行こう?」
「うん……え?」
「……いや?」
「いやじゃ……ないです」
「ならいいでしょ?」
「うん……」
そう言って、俺達は目線を合わせられず歩き出す。
そして数歩歩いた後、突然後ろで『カタン』という音がした。
「ん……ところで、なんか後ろから視線を感じるんだよね」
「ああ、それは……俺も思ってた」
そう言って俺たちが振り返ると、不自然に置かれた段ボール箱があった。
「あれ、誰だろうね」
「……美琴」
「そうだよね――気づかれてないとでも思ってんのかな?」
「うん、たぶん」
そう互いの顔を見合わせた俺たちは、くすりと笑い合い……
「それじゃ、行こうか」
「え? 良いの何も言わなくて?」
「別に……美琴だから良いでしょ」
「そう言う扱いなんだ」
そう言って、自然に手をつなぎ歩き出したのだった。
◇◇◇
そんな歩き出した二人を見て……段ボール箱の中に入っていた美琴は一言。
「もうあれ、付き合ってるだろ……」
そう言って真っ赤になった顔を覆いながら、指の隙間から二人のことを見ていたのだった。
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