いま彼女はパンツを履いていない。

 目の前にいる女性は確かに、雫さんとどこか似た様な雰囲気を感じた。

 しかし……なんというか、見た目はあまり似ていないように感じた。 


 茶色い髪をボブカットにした彼女は、雫さんのお母さんと同じように何処かマイペースでのほほんとした柔らかい印象を受ける。


 顔立ちはやはりというか遺伝なのか、整っている。綺麗というよりは可愛いというべきか、何処か子供っぽい顔をしているように思える。


 そんな彼女だが、目を引いてしまったのは顔だけじゃない。その胸についている大きなスイカ。


 でっかい、おっぱい。でっかい……オッパイ(大事なことだから二回言った)。


 そんな彼女は、上半身はTシャツ、下はパンツ丸出しの状態でドアの前に立ち……


「……ひっ⁉ 男の人」


 小さな悲鳴を上げ扉を閉めた。


「え? 男の人……いやいや、ここ家で、雫の部屋……だよね? アハハ、男の人が居るわけないよねぇ……」


 そんな声が聞こえるか聞こえないか、分からなかったがその次の瞬間扉が開き……


「シュッ」


 一瞬で扉が閉まる、そしてまた扉が開く。

 そしてまた扉が閉まり……開き、閉まり開き……


 ガチャンバタンと何度も音が鳴り響く中、落ち込んでいた雫さんがベッドから立ち上がり、何処か闇を纏って扉へと歩いていく。


 扉の前に立った、雫さんはまた扉が開いた瞬間、閉まろうとする扉をガシッと掴んだ。


「ちょっと、お姉ちゃん開けるか占めるかどっちかにして」


「ぎぇぴぃぃぃぃ……」


 そう言って雫さんに扉を開けられ、廊下にいた雫さんのお姉さんが変な悲鳴を上げた。

 パンツを丸出しで。


 なんていうか……その、正直眼福ですけど、目のやり場に困るというかなんというか……


「くぁwせdrftgyふじこlp」


「……あ、逃げた」


 そう言って動揺している雫さんのお姉さんは目を丸くして脱兎のごとく逃げ出した。


「えっと、ごめんなさいって言った方が良いのかな?」


「ん……別に、知らない人が居るといつもああなるから」


「そ、そうなの?」


「ん……お姉ちゃん陰キャだから」


 そう言うと、雫さんはため息をついた。


「そ、そっか……あれ? そう言えば、お姉さんなんか探しに来てなかった?」


「ん? ああ、そう言えば……」


 そう言ってポンッと手を打った雫さんは、屈んでベッドの下に頭から突っ込んだ。


「……あ、いた……ちょっと、暴れ、んー……あっ、そこダメ。んっ」


 ベッドに突っ込んだ雫さんはそんな色気満々の声を出す。

 やっべっ、凄い……エッだ。


 そんなことを考えて、雫さんを見ていると、スカートから覗く太ももが目に入ってきた。


 ……そう言えば。


 そう言って俺はポケットに手を入れた。

 手に当たる布の感触。


 そして思い出されるこれまでの記憶……そうだ、間違いない。

 雫さんは家に帰って来てから、


 これがどういうことか分かるか?


 1+2+3+4+5+6+…………=いま彼女はパンツを履いていない。


 そう、つまり俺の計算が正しければ……そう言うことだ、下半身だけベッドから出して、エッな声をあげる雫さんは、パンツを履いていない‼

 

 ……ヤバい。


 これは、どうするべきだ?

 そう、思った俺の頭の中に天使と悪魔が出現した。


天使「駄目ですよ‼ そんなことしたら、大変なことになってしまいます! ここまで仲良くなれたんですよ! 嫌われてしまうかもしれませんよ‼」


悪魔「別に、まんざらでもないっぽいし大丈夫だろ。大体、さっきも誘ってきてたしよ」


天使「確かにそうですね」


 ってなわけで、やるしかねえよな‼

 一瞬で折れた天使に笑みをおくり、俺は雫さんの後ろに立ったその瞬間……


「……よし、捕まえた」


 そう言って雫さんは青緑の謎の生物を持ってベッドから顔を出したのだった。


「……よしよし、いい子……ん? どうしたの?」


「ア、イヤナンデモナイヨ?」


 雫さんから、首を傾げられた俺はそう言って棒読みの言葉を出すしかできないのだった。

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