パンツを履いたカモノハシ(たぶん)
なで……なで、なで、なで。
雫さんは、その細い指先で優しく青緑の毛玉を撫で上げていた。
……なんていうか、羨ましい。
俺も、なでられたいっ!
……って違う違う。
俺は首を振り、雫さんの膝上で大人しくなでられている生物を見た。
青緑色の毛におおわれ、くちばしらしいものがある。手には水かきがあり、尻尾は平べったい……
なんか、どこかで見たことがある生き物だよな。
あれはたしか、▼と■の発明家兄弟のアメリカのアニメーションに出てくる、英単語の名がついたエージェント……カモノハシ?
そう思いいたって納得し……かけた俺は首を思い切りぶんぶんと横に振った。
いやいや、カモノハシって……んなわけあるか。
カモノハシの色は確か茶色だったはずだ。
けっして、青緑色の毛をしてるなんてそんなわけあるか。
それにカモノハシは、パンツを履かないだろう!?
そう、目の前にいる謎の生物は、何故か女性物のパンツを履いていた。
……嫌、それは久恵家の趣味の可能性があるか。――女物のパンツをペットに履かせる趣味って一体……
俺には分からん。
「それで、雫さんが抱いてるのって……何?」
そう俺が訪ねると、雫さんは抱いていた物を抱えて見せて来た。
「……ん、カモノハシのフタバ」
「あ、うん」
どうやらカモノハシであってたらしい。
しかし、本当にカモノハシなのか?
明らかに、カモノハシと見た目が違いすぎる気が……
「ん? どうしたの?」
「いや、それカモノハシじゃないような……」
「ん、くちばしがあって、毛が生えてて……どっからどう見てもカモノハシでしょ?」
……色が違うんだよなぁ。
そう俺が遠い目をしていると、カモノハシ……フタバは俺に向かって決め顔でサムズアップしてきた。
……やっぱ、たぶんこいつカモノハシじゃない気がする。
「……ん、ちょっと疲れた」
そう言って雫さんはフタバを下ろした、その次の瞬間フタバは後ろ足で立ち上がると、アクロバットな動きで雫さんの背後を取り………
「ん、気持ちいい……」
雫さんの肩を叩き始めた。
その姿はさながら、ロックバンドのドラマーの様。
顔にはいつの間にかサングラスをかけてダイナミックに動いていた。
「……うん、やっぱそいつ、カモノハシじゃない気がする」
俺はそう言って、頭を抑えたのだった。
◇◇◇
ガチャリと扉があき、フタバをお姉さんに返しに行っていた雫さんが帰ってきた。
「ん……お姉ちゃんから」
そう言って雫さんは、お菓子を見せた。
「……お見苦しい物をお見せしました。ごめんなさい……だって」
「え、いや……そんな………」
お見苦しいなんて、むしろ………
おっぱい大きい美人さん………だが、下はパンツ丸出しって。
むしろ眼福でしたありがとうございます。
「ん、変態」
「……はっ」
やばい、顔に出てた!?
ちらりと見ると、雫さんはお菓子をモグモグしながらジト目で見ていた。
……あ、好き。
「ん、やっぱりオッパイ大きい人好き?」
「え、いや……」
どうだろうか?
確かに俺はおっぱいが大きい子は、好きではある。しかしながら、俺はそれと同じように小さい子も好きだ。普通サイズの子も、整っていて好きだ。
「……まあ、好きではあるよ」
「そうなんだ」
そう言うと雫さんはガクリとうなだれた。
静かになり、お菓子を貪る音が鳴る。
亡くなったお菓子を取ろうと差し出される雫さんの手、その後ろに見える、太もも。
そんな俺の目線に気が付いたらしく、雫さんはチラリと俺のことを見た。
「どうしたの?」
「いや、何でも……」
そう目をそらす。
「……ん? あ、そういうこと」
そう言うと雫さんはぺしぺしと太ももを叩いた。
「来ていいよ?」
「え、いや……」
「ん、おいで」
「でも……」
「良いから来る」
そう言って俺は、気が付けば雫さんに膝枕されていた。
え、今……どういう状況?
膝枕、え?
ぷにぷにと、さらさらとした感覚。
細く柔らかく、弾力のある感覚。
……気持ちいい。
けど……
「ん……やっぱりコレ恥ずかしいかも」
そう言って顔を赤くした雫さんを下から眺めていた俺は、雫さんがしたんでしょう……そう思いながら、自分の顔も熱くなるのが分かったのだった。
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