試着室と彼女のパンツ

 好きな服……と言っても一つに絞れない為一応幾つかの服を着てもらうことになった。


「ふーん……これが。分かった……」


 そう言って俺が選んだ服を受け取った彼女は何か納得したような顔をした。


「……これも、好きなの?」


「一応着て欲しいかなって……」


 そう言って彼女が見せたのはさっき戻したワンピースだった。


「……や、やっぱ嫌?」


「ん、全然……それじゃ、とりあえずコレ着てみるから」


 そう言って彼女は試着室がある方へと歩いていく。

 

「……どうしたの? 来ないの?」


「い、いや……なんていうか、俺はそこらへん歩いてるからさ?」


 今から試着……つまり服を着替えることになるんだ。見えないとはいえ、やっぱり……ね?

 言いたいことは分かるだろう?


 俺がそう思いながら目をそらすと彼女は「なにいってんの?」と首を傾げた。


「……貴方が来なきゃ試着の意味ないでしょ?」


 そう言って彼女は俺の腕を掴んだのだった。



「それじゃ……着るから、待っててね」


 そう言って彼女は試着室へと入り……


「あ、そうだ……言い忘れてた」


「え、何?」


「ん、見たかったらカーテン開けていいから」


 そう言って彼女は試着室のカーテンを閉めたのだった。

 ササ―とカーテンが閉められ、俺と雫さんは布一枚ではばまれる。


 ……え、見たかったら見てもいいって。

 そう脳内がフリーズを起こしていた時カーテンの中から、スーという布が擦れる音が聞こえてきた。


 下から覗く隙間から、パサリという音が鳴って彼女が着ていたスカートが落ちる。


 スカート……つまり彼女は今、パ、パパ……パンツが。

 

 そう思い、気が付けば俺の手はカーテンへと延びていた。


「……はっ⁉」


 いやいやいやいや、駄目だって。

 ……でも、見たかったら見ていいって言ってたよな……


「いやいやいやいや、駄目だ駄目だ駄目だ」


 そう俺が首を振っていると試着室のカーテンがひらかれた。


「何してんの?」


「い、いや……なんでもッ」


 そう言って俺が彼女を見た瞬間、俺の脳内に激震が走った。

 ……いや、なんで下着姿でカーテン開けてんの⁉


 白い下着を薄ピンク色のレースが飾っている。

 上下揃った、女の子の下着。


「……見たいんでしょ?」


「そりゃ見たいですけどっ……はっ」


 俺がそう言うと彼女は「ふーん」と口元を歪ませた。


「そっか、見たいんだ。いいよ見て」


 そう言って彼女は俺を試着室へと引きずり込んだ。

 途端に彼女との距離が近くなり、指が彼女の普段隠されている肌へと触れた。


「ん……」

 

 柔らかく……さらっとした感触。

 その瞬間俺の頭はハッと賢者になった。


 ……いや、何この状況。


「っ……で、出るから。待ってるから……服着てえっと」


 そう言って俺は試着室の外へ出た。


「……むぅ、もう」


 カーテンを閉める間際に見えた、彼女の顔がふくれっ面になっていたのはきっと気のせいだろう。


 



「着てみた」


 そう言ってカーテンがひらき、中から雫さんが出てきた。

 足首まである長い白いワンピースだ。

 ふんわりとした清楚で優し気な癒し系。

 だけどやっぱり……長すぎるな。


「やっぱり……次」


 そう言って彼女はカーテンに隠れて新しい服を着る。

 布が擦れる音が、俺の耳に聞こえてくる。


「これは?」


 そう言って次に彼女が見せたのは、足にフィットするジーパンに上にジャケットを着たカッコいい系と行ったらいいのだろうか?

 そんな服装だった……が。


 これも、長い。

 長いんだよな。


「……次」


 そんな俺を見て彼女はまたカーテンに入る。

 スーと音が響き、俺の脳を刺激する。

 思い出されるのはさっきの彼女の下着姿。


 やばいな。非常にヤバイ。賢者にならねば。


 そんなことを考えているとカーテンがひらかれて彼女が姿を現した。


「じゃあこれ……やっぱりこれか」


 そう言って彼女が見せてきたのは、短いスカートにぶかぶかとしたラフなパーカーの姿。

 何より目を引くのはパンツが見えるか見えないくらいかの長さしかないミニスカート。

 

 覗く太ももが、キラキラと光り輝いて見える。

 そして中は、見えるか見えないか……

 

「なるほど、君はこういう服が好きなのか」


 そう言って彼女はスカートを見た後。

 

「短いね…………エッチ」


「うっ……ごめん」


 そう言って彼女は俺にジト目を送った後、フワッと微笑んだ。


「……けどいいよ、もっと見てもいいよ」


 そう言って彼女は、スカートの裾をチラッと引いて見せた。

 太ももが露出し、柔らかな肌色が露出する。

 

 ……触りたい。触ってみたい。どんな感触がするんだろう?


「……触る?」


「え、いいの?」


 はっ、しまった。

 思わず欲望が漏れてしまった。


 ふと彼女を見ると、俺の言葉に目を丸くさせた後、目線を下げて口元を抑えた。 

 やばい、やっぱ怒ってる……のか?


 そう思っていると、彼女は小さく……


「……やっぱダメ。だって――」


 そう言って耳を赤く染めて……スッとさっき試着室で見せたパンツを差し出したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る