三枚のパンツ

 俺達はユークロ店内にて、彼女の服を選んでいた。


「ねえ……どれがいいのかな?」


 彼女にそう尋ねられた俺は直ぐに答えることができなかった。

 何故って?


 それは今いる場所が、ユークロの中でも女性用の下着売り場だったからだ。


「……ねえ、どう思うの?」


 そう言って彼女は頬を膨らませながら三枚のパンツを見せてくる。

 一つはシンプルな、清楚だったり元気な子だったりと割といろんな子が無難に着ていそうな白色にフリルがついたパンツ。

 二つ目は、ピンク色に黒い紐がついた……なんというか勝手なイメージだがぴえん系女子が着ていそうなパンツ。

 そして、三つめはヒョウ柄のまるで黒ギャルが着ていそうなパンツだった。


「……ん、私的にはどれもいいけど、やっぱりこのピンク色の」


「あ、あのさ……雫さん」


「ん、なに?」


「俺達って服を買いに来たんじゃなかったっけ?」


 俺がきまづくなってそう言うと彼女は「はっ⁉」とした顔になった。


「ん、そうだった……服買いに来たんだった……パンツはまた後でいいか」


 そう言うと彼女はパンツを置いて服売り場へと歩いていく。

 マイペースだなぁ。

 ……そう思いながら、俺もまた彼女について歩いて行ったのだった。


 服が売られている場所につくと、いろんな服が置いてあった。

 まるでスーツみたいにしっかりした服や部屋着にちょうどいい服、女の子がお出かけで着るような春を感じるふんわりとした服にアニメや漫画のキャラクターが書かれた服もある。


 ……本当沢山あるよな。服が多すぎて目が回りそうだ。


 俺がそう思っていると、雫さんも同じことを思ったみたいでぽつりとつぶやいた。


「……服、多すぎる」


 彼女はそう言って小さくため息をつくと、ふと俺の顔を見て訪ねて来た。


「……ねえ、どれが好き?」


「え? どれが好きかって……」


 いきなりそう言われても……

 うーん、正直雫さんにはどの服も似合いそう。

 だからどれが好きかって言われても決められない。


 ……あ、そう言えばどこかで見たけど、こういう質問ってもう女の子自体は選んでて同意を求めてるんだっけ?

 え、じゃあやっぱ雫さんも好きな物とかもう決めてるのかな?


「……ん?」


 だとしたら、雫さんが決めた物を選ばないと。

 でも、どれがいいんだ?


 雫さんと一通り見て回っていたが、彼女はどの服に対しても同じような反応をしていた。

 ……分からん。

 いや、分かるんだ。俺なら分かる、彼女のことが!


 そう言って俺は、思考する。

 一足す、二足す、三足す、四足す……見えた、彼女の服の好きの意図‼


「……やっぱり、この白色のワンピースとかがいいんじゃないかな?」


 俺はそう彼女にそう言うと、彼女はワンピースを手に取って「そう」と小さく呟いた。

 ……これは、どうだ? 俺は正解だったのか?

 

 俺はそうドキドキしながら彼女の言葉を待った。

 きっと好きだったら「私もそう」というだろうと思いながら。


「ん……それで、他に好きな服ある?」


 心臓を高鳴らせていると彼女は俺に再度そう尋ねた。


「へ? 他?」


 ほ、他って……え、えっと……他。他に雫さんが好きなのがあるの? えっと、だったら……

 そう、俺が脳みそをフル回転させている時だった。


「ん、もしかして貴方……私の好みの服を選ぼうとしてる?」


「え? い、いやそんな……」


「やっぱりそうなんだ」


 そう言うと、彼女は何処か呆れたようにしてそう言うと小さくため息をついた。


「ちょっと前に言ったでしょ? 私、服とか分からないし、パンツ以外こだわらない主義だって」


「え、あ……うん」


「何がお洒落で何がお洒落が無いかなんてわからない、ってか……私にはそんなの関係ないし」


 そう言うと彼女は持っていた服を元あった場所に戻した。


「貴方の服の好み、これじゃないんでしょ?」


 ……確かに、そうだ。

 いや、あの服が雫さんに似合わないわけじゃない。

 むしろ似合っていると思う、清純な美少女である雫さんにぴったりだと思う。


 だけど、俺が一番見たい雫さんの服装じゃない。

 あの服じゃ……長すぎるから。


「私は……貴方の好きを聞きたい」


 そう言って雫さんは俺の瞳をじっとみつめたのだった。

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