始まりのパンツ
推しがいて、クラスの陽キャとかかわらないよう影を潜めて暮らす、そんな蛆虫みたいな男。
それが俺なのだ。
現在、俺は学校の自分の席でホームルームが始まるのを、ただひたすらに待っていた。
ふと顔を上げれば、このクラスには個性豊かな人がいる。
しかし俺には特に何もないのだ。
個性という個性が無い、ただの一般モブ。
そんなことを思って、俺が小さくため息をつくと、一人の少女が入ってきた。
白色の美しい髪の毛、めんどくさそうに半眼になった青い瞳。口元は小さく、横一列に結ばれている。
手足は細く、長く……寝不足気味なその少女は、何時ものように何も話さずに席に着いた。
まるで、アニメの世界からそのまま飛び出してきたその美少女こそ、このクラスで最も存在感を放つ美少女、
誰ともかかわらず、誰ともなれ合わず、一言も話さずにただそこにいるだけ。
だというのに、視線は彼女にくぎ付けになる。
いつもは三次元の女の子に興味なんて示さない俺だが……ぶっちゃけ言おう。好きだ。可愛いと思ってるし、やっぱり大好きだ。
……まあ、俺に告白する勇気なんてないし、そもそも釣り合わない相手だってことは分かってるんだけど。
そんなことを思いつつも、チラチラと彼女を見ていると、カバンの中からやけに分厚い花柄の封筒を取り出しているのが見えた。
……あれって、もしかして、ラブレター?
そりゃそうか、あんなに可愛いんだもんな。告白の一つや二つ、されるはずだ……
そう思って、眺めていると彼女がふと俺の方を見た気がした。
……今、俺の方を見た? いや、流石に気のせいだ。俺の自信が過剰すぎるだけ……いや、違うな。たぶん視線が気になっただけだろう。
そう思って俺は、顔を伏せる。
俺の事なんて、きっと彼女はなんも感じていない……だって、彼女が俺みたいな普通の人間に興味なんてあるはずもないのだから。
……
…………
何時もの日常、何時もの日々。
全ての授業が終わって俺は、何時ものように家に帰ろうとしていた。
結局彼女は告白を受けに行ったのだろうか。
そんなモヤモヤを抱えながら帰ろうと靴箱の扉を開けた時、靴箱のなかに何かが入っていることに気が付いた。
「は? 手紙……?」
靴箱の中には、やけに分厚い花柄の可愛らしい封筒が入れられていた。
どこか見覚えがあるような……ないような。
首をかしげてその封筒を手に取る。
もしかして、誰かと間違えたのか? そう思っていたが、どうやら俺宛てで会っているらしい。
なぜならば、差出人は書かれてなくても、送る相手の名前が書いてあったからだ。
そのおくる相手は俺である。
俺宛ての、謎の封筒。
しかし、この封筒……どこかで見た様な?
そんなことを思いつつ、俺は封筒を開けてみた。
「……『今日、校舎裏に来て。来ないとそのパンツを取られたって先生に言うから』……っておいおい」
封筒から出てきたのは、そう書かれた手紙と一着の白いパンツだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます