パンツに慣れた

 貰ったパンツは、暖かく。薄緑色のパンツだった。柔らかく、夏を感じさせる色の新緑のパンツは……エッチィ匂いがする。


「……ん、あの。匂いかがれると恥ずかし……」


「え? わわっ……」


 気が付けば俺は、雫さんの目の前でパンツを嗅いでいた。


「あ、えっと……ごめんなさい?」


「ん、別に……その……」


 そう言って雫さんはモジモジと手を動かした。

 足を、こすり……なんというか、可愛くて……エッチ……つまり、好き。


 あ、なんでだろ。何でか、エッな匂いがして……


「ん、だから……恥ずかしい」


「はッ⁉」


 また匂いかいでいたとっ⁉


 パンツをポケットに入れ、雫さんは俺の顔を見た


「……ん、それにしても……貴方、その………最近パンツ渡されることに慣れて来た……?」


 パンツを渡されることに慣れて来たって、どういう状況だよ。

 と、俺は思わず心の中で突っ込もうとした俺だったが……でも、言われて見れば確かに俺はパンツを渡されることに慣れてきた。


 その上、なんというか……まだドキドキしてしまうが、雫さんと話すことにも慣れてきたように感じる。


「……そうだね、確かに慣れて来たかも」


 そう苦笑いで言うと、雫さんは口をとがらせた。


「……つまらない」


「え? なにかいった?」


「別に……」


 そう言うと、雫さんは俺の手を握ってきた。


「一緒に帰る?」


「え?」


 そう言って雫さんは俺に尋ねて来た。


「嫌?」


「嫌……じゃないけど」


 嫌なわけない。

 けど……一緒に帰るって。


「……そうだね、一緒に帰ろう」


「ん……うん」


 そう言って雫さんは赤い顔を地面に向けた。


「……とりあえず、荷物……取りに行こっか」


「ん……」


 そう言って俺たちは、教室に向かって歩き出す。

 誰もいない廊下の中、ふと外を見れば運動部が部活しているのが見える。


「元気だな……」


「ん、そうだね」


 そう会話と言えるか言えないかの微妙な言葉のやり取りをしながら廊下を歩いていた俺達の目の前に、一人の女の子が現れた。


「あー雫! こんなところにいた……って、お、お前らっ」


「……あ、美琴」


 そう雫さんが声をかけると、美琴さんが驚きの声を上げた。

 何故か、顔を赤く染め、あわわと口を動かしている。


「あ、美琴……じゃねえよ! お、お前ら……お前ら、まさか」


 そう言うと、プルプルと指を震わせ指さした。


「お前ら、エッなことしただろっ⁉」


「は、え?」


「……え?」


 そう言って俺と雫さんはポカーンと口を開けた。


「……したんだろっ! その顔」


 そう言って俺と雫さんは顔を見合わせる。


「エッな事、した?」


「いや、別にそんなこと……して、な」


 そう言いかけた俺は、ハッとする。

 もうすっかりに日常に溶け込んでたから忘れてたが、パンツを渡されるっていう……エッなことしたわ。


「……その、雫さん……ごにょごにょ」


「……はっ、確かにエッな事だ」


 そう、俺が言うと、雫さんは赤く顔を染めた。


「やっぱお前ら、したんだな! しちゃったんだな! いいのか⁉ 子供出来ちゃうんだぞ!」


 そう言って、美琴さんはヒートアップする。

 美琴さん、はおそらくオセッセの事を言ってるんだろう。


 が、まだ俺たちは……その、していない。


 いや、したいなーと思ったり、しようとしかけたことはあるが……まだしていない。


 したいけど。


 って、とりあえずここは、オセッセの誤解を解かないと。


「あ、いや……その…………」


「ん、確かにエッな事って言われれば、そうかもしれない…………けど、別にそんな過激なことは……」


 そう、顔を赤くしてもじもじしながら言う俺たちを見て、美琴さんは――


「やっぱり、やっぱり……お前らっ! チューしたんだな‼」


 震える声でそう言ったのだった。


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