第17話 ネコと秘書とネズミ
『やっと入れたぜ…』
『やっと解放されたわい』
大きな猫(前世では熊くらい)と小さなネズミ(カヤネズミくらい)は、秘書を挟んで両隣に座っている。ただ。その秘書も普通の人より筋肉隆々で、2人の聖獣は若干離れている。
「初めまして、シン様。私はこの御二方付きの第7秘書です。先程はすみません。私の教育が至らないばかりに」
と、その大きな体がたためるくらいのお辞儀をする。
『オレ様は何もしてないぞ』
『わしもじゃ』
「ここに来るまでに、競争してたのは誰ですかね!」
何もしていないという2匹に秘書は凄みのある顔で睨む。2匹の聖獣は口を尖らせ
『それはこいつが悪い。嘘の時間を教えやがった』
『騙されるほうが悪い。何にしても1番はこのわしじゃ』
『お前はただ、何もせず牛の背中に乗ってただけだろうが!』
あぁ、そこからの因縁か、と思いながら
「残念ですが、あなた方は1番ではありませんね」
スッパリとワタシは言う。猫とネズミは、ぽかんとしてこっちを見る。
『い、いや、これでも急いで来たんじゃぞ。この猫に先を越されぬように』
『秘書にまだ誰も行っていないと聞いたぞ、オレ様は』
2匹は同時に秘書を見た。ちらっと2匹を見た秘書は
「そんなの嘘に決まってるじゃないですか」
「ちなみに聖獣でこられたのは、あなた方で3、4人目ですね」
『『なんだって?』』
嘘だということと、1番では無いことに2匹はショックを受けたようだ。そして今更ながら、エウポリアとシンバンに気がついた。秘書は最初から気づいていたようだ。
「あの
「シンバンだよ」
秘書の疑問にエウポリアが答える。聖竜の眷属とワタシは訂正した。
「ちなみにこちらの方々は、聖猫様と聖鼠様です」
『ちなみに、とはなんじゃ』
と、聖鼠はふてくされる。
「えっと、聖獣様1人につき秘書さんは1人ではなく?」
もっともな疑問だった。第5秘書も第13秘書も1人で聖獣に対応していた。第7秘書は、困った顔をして
「普通はそうなんですが、先程の騒ぎといい、2匹で何かしら騒動を起こすので、
ニコイチで見たほうが早いのです」
まとめて見た方が早いって仮にも聖獣なんだよな。
「それに2匹とも俊敏なので、捕まえるために、速さがウリの私が選ばれたのです」
え?速さで?とワタシはびっくりした。
「じゃあ、その筋肉は何の為ですか…」
「これですか?これはただ趣味で鍛えてるだけです」
右腕で力こぶを見せながら、秘書はニコッと笑った。
『だから言ったじゃないですか。面倒くさいって』
今までずっと黙っていたクルクルがぼそっとつぶやいた。
エウポリアとシンバンは秘書を真似て力こぶを作って見せ合っていた。
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