第8話 先代の力

 この見えている真っ白い風景。その全部が前の星が爆発したときに、粉々になった粒だというのか。


「いやいや…実際全部が前の星の粒だとしても、爆発したときにはもっと大きな塊だったはず。それに爆発の影響で他の星に塊が衝突しないか?」


 と、疑問に思って聞いてみた。クルクルは少し回復したようで背筋を伸ばした。いや棒を伸ばした。


『それは詳しいことは分からないのですが、先代様のお力ではないかと』

「星の爆発が拡がらないように抑える力があったってことか?」

『そうです。聖竜様も仰っていたでしょう、先代様は優秀な方だったと。前の星を大切になされていたからこそ、他の星に迷惑がかからないよう消える間際まで全力を尽くされたのです。ご自分も体を壊されていたのに』


 その場面を見たわけではないクルクルは、ハンカチを持っておいおい泣き始めた。ハンカチはどこから出して、そしてどうやって持っているんだ…

 一通り泣き終わったクルクルは


『ですので、ここには前の星の砕けた粒がほぼ全部あります。そこに主人どのの魔力をかけ合わせて、新しい星を創っていきましょうと、そういうことです』


 うーん、とワタシは悩んだ。前の星は自分も覚えていないが住んでいた星だ。前の神様が消えるまで守っていた星。それに自分が手を加えて良いものなのか。ましてや、その滅ぼした原因の生物(ニンゲン)であって、いろいろ複雑な心境。


「なあ、なぜワタシが選ばれたのかは、クルクルも知らないんだよな」

『もちろんです。創造神様が決められたことなので。トップシークレットです』


 クルクルは卵の方に向いて、コンコン!と殻を鳴らしてみた。ちょっと動いた気がする。


『主人どの!卵がわずかですが反応がありました。どんな仔が生まれるんでしょうね!』


 まるで誕生を今か今かと待つ親のように、クルクルははしゃいでいる。人間味がありすぎだろう。クルクルにはもう少し休んでもらって、ワタシは核が簡単に壊れないよう強化の魔法をかけてみた。一気に流すのではなく、少しずつ。

 今は慣れない魔法の操作だが、毎日少しずつ流せば成果が出てくるだろう。


 それにしても、爆発を抑えるだけの力があった先代の神様。それも消える間際、体を壊してまでも、迷惑をかけるわけにはいかないという強い意志。もしそれが先代一人だけの力だとしたら…自分に先代を超える力があるだろうか。なくても近づけることができれば…


 ワタシは果てしなく遠い目標を持った。

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