第7話 クルクル

「とりあえず、聖竜様とのお目通りは済みましたので、そろそろお暇しなくては。聖竜様、よろしいですか」


 創造神に報告をしなくてはならない、と第5秘書は聖竜を急かす。聖竜はえー?と渋りながらも了承した。


『先程の防音防壁、気配察知の魔法は解除した。当たり前だが、我らの他に誰も聞いても見てもいない』


 と、聖竜は気になることを言ったが、今は早く帰りたい秘書のために黙っておこう。


「シン様、この卵が孵れば聖竜様との縁が繋がり、聖竜様もこの星に来ることが簡単になります。聖竜様のことですから、頻繁に来られるでしょう。適当に相手をしておけばよいのです」


 と、秘書は少し冷たい言い方をした。さっきの秘密をバラしたことをまだ怒っているのだろう。


『しょうがないではないか。この口がいかんのだ。…なんだ、その目は』


 そう聖竜が言うので、秘書の方を見たらプイッと横を向いた。


「とにかく、シン様。これから他の聖獣様も縁を結びに来られるかもしれません。私達秘書がしっかり致しますので、安心してお仕事をお続けください」


 では帰りますよ、と秘書は聖竜の足を押す。


『分かった分かった。帰れば良いのだろ?シンよ、我が来る時はほれ、そなたの棒?なのか、アレは。…知らせてくれるそうだぞ』


 そういえば、ずっと放ったらかしにしていた棒は混ぜる仕事をしてくれてた。ごめん。

 通信機能もついてると、創造神は言っていたな。


 聖竜と秘書はドアを開けて帰っていった。

 他の聖獣も来るのか…賑やかになりそうだ。とりあえず聖竜から貰った卵を孵すのと、星を創るのが先決だな。


 卵はロッキングチェアに置いて、放ったらかしにしていた棒の様子を見に行く。

 棒は律儀にクルクル回っている。…ずっと棒と言うのも変かなと思い、


「なぁ、棒に名前をつけてもいいか?」


 一応棒に問いかけてみる。すると棒はピタッとワタシの前に止まり、じっとしている。


「ワタシの名付けのセンスを恨むなよ…クルクル」


 するとクルクルと名付けられた棒はピカッと光り…光ったが棒のままだ。


「なんの変わりもないな」

『話せるようになりましたよ、主人あるじどの』


 と、クルクルが元気よく左右に振れる。


「えっ、なんで話せるの」

『それは主人どのと繋がったからですよ』

「名前を付けたから?」

『ですです』


 えらく軽いノリでクルクルは応える。


『しかしですね、主人どの』

「なんだ」

『私にも休憩をください!いくら万能と言われても、棒でも疲れるんです!』


 と、ずぃっと顔の近くまで来て訴える。圧が強い。


「分かった…休んでいいから。あ、でも離れてもいいのか?」


 クルクルは卵がいるロッキングチェアの肘置きにもたれかかった。余程疲れたのだろう。


『大丈夫ですよ。中心を見てください』


 クルクルの言う通り、中心を見てみるとクルクルに引っ付いていた光の玉が浮いて止まっており、その周りを薄いもやがドーナツみたいに囲んでいる。


『その真ん中の光の玉が、先程話されていた核です。自立できるようになったので』


 ワタシは目を凝らして核を見た。まだ大きくなってはないが、周りのもやがキラキラしている。


「このキラキラしてるのはなんだ?」

『核の周りのですか?それは粒ですね』

「粒?」

『えぇ、前の星が爆発したとき粉々になり、粒の形になりました』

「前の星の…」


まだ生きていたかったのか。このくらいしか残ってないけれど。


『主人どの、それだけじゃないですよ、粒は』


 は?他にもあるのか?


『主人どの、分かりませんか?この世界がなぜ白いのか』


 ん?ただの白い世界だと思っていたが、まさか。


『そのまさか、です。この白く見えているもの全部、前の星の粒です』

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