第19話 落とし物
聖猫、聖鼠、第7秘書が帰ったあとから、エウポリアとシンバンはワタシに、腕に捕まらせてくれとせがんだ。
ワタシは第7秘書みたいに力持ちじゃないし、背もエウポリアよりは高いがまだ子どもだ。一回試しにやってみたが、10秒ほどで力尽きた。大人じゃないと2人を持ち上げられない。エウポリアとシンバンはぶーぶー文句を垂れている。
「ワタシは背が高くなるんだろうか」
と、諦めて遊び出した2人を見て、ワタシはクルクルに聞いてみた。
『ご自分が成長されたいと思うのなら、成長できると思いますよ。魔法が上手くなれば外見も変えることができるかと』
「そういえば、聖牛さまは女性の姿だったな」
『そうですね。牛の姿でも神々しいですが、あの姿の方が良いのでしょう』
聖牛という言葉が出たので、エウポリアはとことこと寄ってきた。
「せいぎゅうさまの、おはなし?」
「そう、聖牛さまは綺麗だね、って話」
「そうなの!やさしくてきれい!」
ふふふん!とエウポリアは上機嫌だ。聖牛から貰ったベルをポケットに入れ、いつも持ち歩いている。その横でシンバンは首を傾げていた。
「シンバンは聖竜様に会ったことはないよな。卵だったから」
「キュー?」
「そのうち、見にくると思うんだけど。シンバン、びっくりすると思うぞー」
「キュ…?」
「わたしも、せいりゅうさま、みたことない」
『では、2人とも驚きますよ。大きいので』
「えっ?どのくらい?」
エウポリアは知りたいようだ。
『さっき来られた聖猫様よりも、もっともっと大きいですよ!』
「ふぁぁぁ!」
「キュキュキュー!」
2人はどんなふうに大きいのか、予想がつかないようだ。とりあえず凄く大きいということだけ、頭に入ったようだ。
聖竜はまだ忙しいのだろうか。全部の聖獣を統べるらしいから、大変なんだろうな。
と、思っているとシンバンから何かが落ちた。ひとつふたつコロコロと。近づいて拾ってみる。んー?小さくて丸い。前世でいうとドングリみたいな。そして固い。
「シンバン、ちょっと来て」
「キュル?」
シンバンが振り返ってワタシの近くに来た。エウポリアとクルクルも寄ってくる。
「これ、シンバンから落ちてきたけど、何だろ?」
「キュル?」
シンバンにも分からないようだ。するとエウポリアが
「わたしももってる。おんなじの」
と、ポケットから出して手を開いた。確かに同じのが5、6個ある。ちょっと形が歪なものもあるが。ひとつ取って見てみる。
「それ、なかみ、ないよ」
「え、中身無いの?」
「うん。ぜんぶからっぽ」
「空っぽ?じゃあ、これは?」
「これもないよ」
と、ワタシが拾ったものも、中身が空っぽという。どういうことだ?畜産や栽培の能力がある聖牛の眷属だ。もしかしたら中身が無いのが分かるのかもしれない。
「じゃあ、これは一体何?」
「たぶん、から、じゃないかな」
「から?」
「シンバンがかぶってる、から、みたいな」
「殻かぁ」
「そぉー」
「キュー」
シンバンもとりあえず同調してみた。
『なんで中身が空っぽなのか、聖竜様が来られたら聞いてみましょうね』
「わかったー」
「キュー」
クルクルの提案に2人は聖竜が来るのを今から楽しみなようだ。とりあえず、また落ちてると踏んでしまうので、シンバンには肩から斜め掛けにした小さいカバンをあげた。これに見つけたら拾ってもらう。ほぼ自分から出るが。シンバンは自分の持ち物をもらえて喜んでいる。すると、エウポリアがワタシをジッと見るので、エウポリアにはポシェットをあげた。それにポケットから、ベルと意味不明な殻を収める。カバンやポシェットがいっぱいにならないうちに、早く聖竜が来てくれることを願う。
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