第20話 迷子は何処へ

「ちょっと急ぎすぎですよ、聖竜様」

『なんで早く知らせなかったのだ!』

「聖竜様が私からの通知を切ってたからじゃないですか」

『それはそなたのせいではないか。通知が多すぎる!』


 聖竜と第5秘書はバタバタしながら、光の道を進む。どんどん太陽から離れていく。


『よりによって、この銀河の1番遠いところに流されよって。しかも光が届かないから寒い!』

「聖獣さまですから死にはしませんが、今冬眠中だそうです、眷属の方によると」

『なんだって!?他の眷属は起きてるのに、なぜあやつだけ冬眠してるのだ?』


 聖竜は翼を使って飛びながら光の道を進んでいるのに、秘書は道を滑りながら進む。普通の靴を履いているのに。その秘書が言うには


「それがあの方は低血圧で1番最後に起きられるようで。ほこらへ起こしに行かれた方は、突然祠の奥に亀裂が入り、そこに吸い込まれるようにあの方が消えてしまったと言われました。ただ、眷属の方々とは繋がっていますので…」


 秘書はゴソゴソとスーツの胸元に手をやり、そこから出てきたのは青く小さな蛇だった。


「聖蛇さまは、こちらの方角でよろしいですか?」


 そう言われた小さな蛇はその鎌首をもたげて小さな舌を出し、チロチロ動かした。


「こちらの方角で良いようです」

『へぇ、なかなかの探知能力だな』


 秘書はまたスーツの中に小さな蛇を入れて


「さて急ぎますか」

『さっきは急ぎすぎとか言ってたくせにな…』


 聖竜はひと羽ばたきすると、スピードを上げだした。秘書はそれに負けじとついて行く。普通は聖竜について行くのも一苦労だが、秘書は涼しい顔をしている。進むにつれて、どんどん暗くなっていく。聖竜はボソボソとつぶやくと、目の前に光の玉を出現させた。その光の玉が先頭に立って2人の行く先を照らしてくれる。

 所々小さな惑星が自身の光を放っているが、漆黒の宇宙ではそれも無きに等しい。すると秘書のスーツに入っていた、小さな蛇が急に顔を出して秘書に訴える。


「聖竜様、もうそろそろ聖蛇さまに追いつきそうです」

『そうか。それなら我にも分かりそうなものだが…はて』


 聖竜がキョロキョロと周りを見渡す。闇の中、光の玉1つでは分かりにくい。聖蛇の気配も感じ取れないので、聖竜はいくつか同じような光の玉を出し、それを1つにまとめ、大きな光の玉を作り出した。


『これなら聖蛇も見つけられそうだが…ん?』


 スーツの中の蛇が警戒音を出す。そして自身の首を1点に向けてじっと見つめた。


『どうしたのいうのだ、そちらに何が…待て待て待て!!!』


 聖竜が蛇の向いた方向を見ればそこには、大きな渦を巻いた黒い影がこちらに近づいてくる。いくら聖竜でもそれをどうにかする手はない。すると秘書が眼鏡をキラリとさせ


「聖竜様!あちらに聖蛇さまが!」


 それは今まさに、聖蛇が黒い影に吸い込まれようとしているところだった。徐々に黒い影が聖蛇に手を伸ばす。


『そなたらはここで待て!我が聖蛇のもとへ行く!』


 と、あっという間にトップスピードで聖蛇に向かっていく。聖蛇は大きくとぐろを巻いたまま動かない。どうしたのかと聖竜が顔を見るとよく寝ている。


『こんな時でも寝ておるとは、まったく!』


 聖竜は急いで聖蛇を掴み、秘書達のもとへ飛んでいく。ここ数年で1番冷や汗をかいた。

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