第15話 消えたもの

 シンとクルクルが国づくりについて話していた頃、創造神は自室で書類の選考をしていた。


「毎日毎日、よくもまぁ、秘書の応募がくるもんじゃ。一応お前達が目を通して厳選した書類じゃろうが、秘書の門は狭いからのー」


 書類を近づけたり、遠くに離したりいろいろな見方で創造神は見ている。要するに飽きているのだ。


「確かに私達がチェックしておりますが、何せ優秀な者が多いので…」


 と、小柄の少し小太りな秘書がハンカチで汗を拭きながら話す。この秘書は人事のトップの第2秘書である。

 秘書と名が付くのは、各聖獣のマネージャー的な役割や、第2秘書のような人事のトップ。それをまとめる総秘書が創造神付きの秘書である。今は外出しているので、第3秘書が創造神付きである。創造神は第3秘書に書類を渡して、第3秘書はペラペラとめくる。


「分かった。今、印を付けた者を後日、面接しよう。日にちを指定して連絡するように」

「分かりました」


 第3秘書が頷く。

 それを聞いた第2秘書はお辞儀をして部屋を出ていった。ふぅーと椅子にもたれながら


「そういえば、シンのところの卵が孵ったというが」


 創造神は第3秘書に尋ねる。すらっとした背の高い、髪を肩までに伸ばした女性の秘書は


「第89番目の神様のところですね。第5秘書からそのように聞いてます」

「サンザスとシンの魔力を入れたからかのう。成長が早いの」

 

 ふっふっふ、と創造神は笑う。サンザスというのは聖竜の名前だ。


「せっかく孵ったというのに、サンザスは残念じゃのう。連絡がつかんのじゃろ?」

「そうですね。第5秘書からのは応答しないそうです」

「しょうがないのう。わしが代わりに見に行こうか…」


 それはまた今度に、と秘書が言おうとしたとき、いきなり部屋のドアが開いた。


「部屋に入るときはノックですよ」


 秘書がキリッと言う。飛び込んできたのはここで働いている職員である。急いで来たので息を整えるのに時間がかかった。


「す、すみません。実はE89番目の神様に危害を加えた者なのですが…」

「その者がどうかしたのですか?」

「それが…消えてしまいまして…」

「なんですって?」

「今日の朝の巡回には独房にいたのですが、先程見た時にはもう、もぬけの殻で。争った跡もなく…」


 と、申し訳なく言う職員に対して、創造神はうーんと唸り、


「仲間が居て連れ去ったか…」

「しょうがありません。手の空いている者で建物の周り、建物の中を探して報告してください」

「わかりました」


 そう言って職員は部屋を後にした。


「これはあやつに知らせるべきかのう。誰が何のために連れ去ったのか、それとも自分で消えたのか…考えることが多くて頭がパンクしそうじゃ」


 創造神が第3秘書を見ながら


「肝心な時にあやつも留守だからなぁ。どこに行ったかいの?」

「聖鯨様のところでございます」


 第3秘書はまたキリリと答えた。





 

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