第16話 追う者追われる者

 ワタシが創造神の代理人になって、どのくらい過ぎただろうか。聖竜が卵を預けて1ヶ月はとうに過ぎ、3ヶ月くらいになろうとしている。ここには時計が無いし、1日が24時間かどうかも分からないので、毎日クルクルに1日が始まったかどうか聞いてる。そしてエウポリアに紙に縦に1本線を引いてもらい、5本目は斜めに線を引く。1本が1日という意味だ。

 今はこんなふうに曖昧な日にちの数え方だが、もっと分かりやすくできないかな。


 そして相変わらずシンバンの頭の殻は外れない。背中の羽も少ししっかりしてきたのか、逃げるときに羽のおかげもあって速い。

エウポリアと鬼ごっこをして遊んでいるときには、すぐ追いついて背中をタッチするので、エウポリアは不満げだ。


 ドタドタと走り回る2人に、目をやりつつワタシは何もすることがない。星も自動式になったものだから異常がない限り、白い粒々を取り込んでは大きくなっていく…

 ん?そこでワタシは気付いた。今、自分達は白い世界にいるが、星が白い粒々を全部取り込んだら、宇宙にワタシ達は投げ出される…いやそもそも、この白い世界自体が宇宙の一部なのだから、星のにいるいるワタシ達は…どうなるんだろう?


 クルクルに聞いてみたいが、さてどこに行ったのか。星の近くにいたので声をかけようと思ったそのとき、


ドンドンドン! ドスンドスン!


 と辺りが揺れた。エウポリアとシンバンはびっくりしてお互いをギュッと抱きしめている。


「なんだなんだ?地震…は起きないよな」

「かみさま、こわい」

「キュキュウ」


ドドドド! ドスンドスン!

 

 まだ揺れている世界に、エウポリアとシンバンはワタシに抱きついてきた。2人の頭を撫でながらキョロキョロする。

 するとクルクルが勢いよくやってきて


『主人どの。ちょっと面倒なことになりそうです』


 そんなことをクルクルは話す。面倒なこととはなんだろう?そう思った時、ドアがいきなり現れ、そこから小さな何かが飛び出してきた。そしてその後に爪を立てた大きく白いモコモコの腕がシャッと出てきた。


『グルルルッ!シャー!』


 ドアの向こうで何かが鳴いている。しかも怒りが入り混じった声だ。


『ンニャー!あいつどこ行ったー!今日という今日は許せんっ!』


 何かジタバタしている雰囲気が伝わる。ドアは意図して大きくならないよう抑えているようだ。そんな様子を見ていたワタシ達のところに


『チュチュッ』


 と鳴き声がした。下を見ると、小さなネズミがワタシ達を見上げていた。


『間一髪で逃れたぞ。ほ、おぬしがこの星の神か。わしはな、聖そ…って、ちょっと待て!』


 ワタシは有無も言わさず、ビニール手袋とマスクを装着しそのネズミを掬って、大きめの洗面器を出し、その中に適度なお湯と石鹸を入れて、ネズミを洗い始めた。


『待て!待て待て!わしは聖獣だぞ。病気なんか持っておらんわ。やめてくれー!』


 ネズミの悲鳴を無視しながらワタシは洗っていく。クルクルは、あーぁと溜め息をついた。


「ねぇ、クルクル。かみさま、じゃぶじゃぶしてるね。ここ、きれいなのに」

「キュキュー」

『何か主人どのの琴線に触れたんでしょうか』


 ワタシの方を見ている3人はそんな話をして、ドアの方ではまだ白いモコモコの腕が、空中を掻いている。


『ドアをでっかくしろ!オレ様が入らないじゃあないか!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る