第6話 88番目

 「この星は他の星と比べ、代理人が代わるサイクルが早いのです。それはなぜかと言いますと、知能が高い生物がいたからです。なぜその生物がいると星が早く滅びるのか、それは星が持っている魔力、鉱物や資源などを取り尽くしてしまうからです」


 第5秘書は眼鏡をクイッと上げ、


「高い知能を持っていると、それをどう使うのか、どう自分たちの利益になるのか、その生物は人数がおびただしいですから、誰かが効率的な策を思い付けば皆、その方法で星の持っている財産を取り尽くします。そしてそれが枯渇すれば、また違う資源をいろんな方法で獲ってしまうのです」


 それを聞いていた聖竜はふぅとため息をつく。


『我が食べたり、飲んだりしているコレも、その文明の生物が作ったものだ。育てた食物で多彩な料理を作ったり、道具を作ったりする種族でもあるがな。良いところもあれば悪いところもある』


 聖竜が、お茶や煎餅を見せて、バリンッ!と煎餅を食べる。


「星の寿命は、自然に終わる場合と、強制的に終わる場合があります。星にも意志があります。あまりにも自分の体内をいじられるとストレスが溜まり、私達の預かり知らぬところで、災害を起こしたり、この星の外側の星が砕けた塊が落ちてきて、生物が死に絶え、星もダメージを負い消滅してしまうこともあります。その生物がいないときもありましたが、その代は10〜20代くらい間が開いて生まれます。この星の場合、極めて稀なケースです」


 そんな生物がいるんだなとワタシは思った。どんな生物なんだろうか。


「話が長くなりますが、一番酷いケースをお話しましょう。それはシン様の前の88番目の星の最後です。前の星は壊滅的に酷い状態でした。災害はもちろん、氷河期に入り、生物はほぼ死滅しました。しかしそこで生物が改心して穏やかに住めばまだギリギリ生き延びる可能性もありました。しかし生き残ったのが欲の深い者たちばかりで、自分たちの領土を広げるため、他の国と戦争を起こしました。地上が削られ、

大気や海は汚染され、星の生命が確実に削られていきました。さて、そのあとこの星はどうしたでしょうか?」

 

 どうしたんだろうか。消滅したのだから何かしらしたんだろうけど。


「答えは、星には核があります。地上から深い深い場所にあり、その核を傷付けると星はすぐに大爆発を起こします。核の周りには厚い壁ありその外側にマグマがあります。星は壁にヒビを入れ、マグマを流し核に流れ着くと、核がその熱さに耐えきれなくなり核が大爆発を起こしました。それは星を一瞬にして塵にするほどの衝撃でした。88番目の神様もこうなると手がつけられず、星が無くなると同時に消えてしまわれました」


 秘書はそのときを思い出したのか、顔を曇らせた。秘書は神様の手伝いはできるが、星には介入できない。ワタシは創る上で気を引き締めないと、と思った。


『星と代理人は一心同体だ。前の神も、相当体を壊していた。それでも最後まで手を尽くした。しかし最後は星の意志を汲んだのだ。歴代の代理人の中でも優秀だったのだが、なぜこのような最後になったのか。我も不思議でならん』


 聖竜も前の神様と懇意にしていたのだろう。だから、新しく来たワタシの様子も見に来たのだろう。二人と話している間にも、卵は成長している。今、自分の膝の上にあるが、ほのかに温かみが増してきた。どんな子が生まれるか楽しみだ。

 聖竜はジロリとワタシを見て


『ふむ。我の卵と相性が良いのか、順調だのう。これは楽しみである』

「少し話しすぎましたかね。歴代の星がどうだったかは、参考にされつつ、ご自分の良いようにお創りなさればいいですよ」

『まぁ、そなたは前の星の住人だったからの。星の最後は気になるかも…あっ』

「聖竜様、それは話さない約束でしたでしょう!すぐベラベラと」


 聖竜はおしゃべりなのか、すぐ秘密を話してしまうようだ。秘書は冷や汗をかいている。


「あの、知ってしまったのはしょうがないので。そうですか、ワタシはその滅ぼした生物でしたか…」


 なんだか思い出せないのに申し訳ない気持ちになった。


『いやいや、そなたはそんな生物の中でも良心的なやつだったぞ。植物をどう増やすか、そればかり考えておった』


 聖竜は自分の失敗を誤魔化すように話し、


『それに、そなたが亡くなってから結構な年月が経ってからのことだからな。そなたのせいではない、な?』


 と、ゴニョゴニョと聖竜は呟き、秘書に同意を求めた。秘書は呆れたように見上げたが、そうですね、と同意した。

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