星が消滅したのでイチから創り直します。

ミナヅキカイリ

第1話 真っ白な世界

 夢なのか現つなのかよく分からない。真っ白な世界にただ浮いている。自分には肉体がない。この世界にいつ来たのかも分からず、上も下も無く白い空間に漂っているだけ。


 自分がなぜこの世界に生まれたのか、誰によって生かされているのか。考えたこともあったが、答えが出ない問いに考えるのもやめてしまった。


 そうして漂っていると、ある時、目の前に白髪の老人がいきなりやってきた。しかもなぜか汗だくで。


「はぁ、やっと探し出せたわい。おぬし、流されすぎ」


 その老人は自分を探していた様子。流されたとはどういう意味だろうか。


「まったく、おぬしが居ないと世界のバランスが保てんからな。あとでおぬしに害を与えたやつに熱い灸をすえんとな」


 ますます意味が分からないと考えた自分に、その老人は困った顔をした。


「流された時間が長すぎて自分の役割を忘れたか…まぁ、わしも疲れたから一休みついでに話してやろう。おぬしの存在をな」


 と、どこからかちゃぶ台と座布団とお茶が出てきた。自分は肉体が無いので座れないんだけど。と、なぜそれがちゃぶ台や座布団と分かるのか、不思議だった。座れるということも。


「ふむ。自分が何者か分からなくても、これらが何かは分かるんじゃな」


老人は少し安堵したようだ。


「じゃあ、まずわしのことを話そう。わしはこの世界を創った者だ。創造神と呼ばれておる」


 この世界を創った?でも真っ白ですけど?


「言い方が難しいが、この真っ白の世界の他にもいろんな世界がある。この白い世界はその中の一つだ。そしてそのたくさんある世界を束ねている存在がわしだ」


 そうなのか。では他の世界も真っ白なのか?そうだと簡単すぎはしないか?創るのは。


「他の世界は真っ白ではない。ちゃんと形も色もある。そしてそれぞれ多様な生物もおる。この世界が真っ白なのはまだ実体がない、ということだ」


 そういうと老人-創造神はお茶を啜った。


「それでな、その世界ひとつひとつに、わしの代理人がいるわけじゃ。わしが全部の世界を廻って管理できないからのう。そして、この白い世界にもいるんじゃ、おぬしがその代理人じゃな」


 なるほど。だから自分がこの世界にいたわけだ。しかし、そのことを何故自分は覚えていないのだろうか。


「んんっ、それはな、さっきわしがおぬしは流された、と言ったであろう?それに関係しとる」


 創造神は頭をかかえながら、自分を見た。


「代理人にも世代交代がある。わしは不死だが、おぬし達は寿命がある。それでも途方もなく長いが。それは星の寿命と一緒なのだ。

この白い世界も寿命…ではないが終わってしまった。そこで新しく星を創るが、代理人も新しく選定される。そこで選ばれたのがおぬしじゃ」


 創造神はまたお茶を啜り、ひと息つくと


「星を1から創り上げるのはなかなか難しい。それに選ばれるのは代理人の中では名誉らしいのじゃが、おぬしへの選定に難色を示した者がいての。…星への正規のルートを通るはずが、おぬしへなんらかのバグを与えて、別のルートを通らせ記憶を失わせたらしい」


 つまらんことをするもんよ、と創造神はため息をついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る