第18話

 レアンドリュー帝国に存在する六大将軍。

 彼らは単独で戦況をひっくり返せるほどの実力を有した一騎当千の強者たちであり、世界の情勢に多大な影響を与える英傑だ。

 帝国の圧倒的な武の象徴であり、巨大な帝国を支える強者である六大将軍の一人であるロベルタが第四皇子たるアレスの命を受け、アルタイル王国へとやってきていた。


「……寒いな」

 

 単身でアルタイル王国へと潜入していたロベルタは自分が今いる場所の厳しい寒さを前に眉を顰める。


「これでは確かに我が軍の人間も満足に行軍できぬであろう……まさか、ここまで寒いとは。さほど位置も変わらぬし、大した差などないと思っていたが……」


「そうでしょう?」


「……ッ!?」

 

 一人でぶつぶつと呟いていたロベルタの元にかけられる一人の少年の声。


「アルタイル王国の寒さは本当に異常だよね。僕もびっくりしたもん。初めて来たとき。他の高緯度たいと比べてもここだけ異常な寒さだよね。防寒具なしでここを過ごそうと思ったら常に魔法を展開していないとすぐに凍り付いちゃう。こんな土地で日常を営んでいるこの国の人たちってばかなり凄いよね」


「そうですわね。私もここまで寒いとは思わなかったですわ。確実に魔法がなかったら死んでいましたわ。私が魔法を学んでいたことに今、心底安堵していますわ」


 一体いつから居たのか。

 ロベルタの前には一組の小さな男女が立ちふさがっていた。


「……お前ら、は……ッ!」


 その小さき男女。

 二人を見たロベルタは警戒心をあらわにする。


「あはっ。知ってくれているようで何より……僕はロニア・ローレシア。ローレシア王国の第二王子にしてアルタイル王国が第一王女、ミリオネ・アルタイルの婚約者だよ」


「その姉のマキナ・ローレシアですわ!」


「……二人、か」

 

 レアンドリュー帝国の広大な領土を長年防衛してきた六大将軍が一人、ロベルタの前に今や全世界に神童として名を馳せる二人のローレシア王国が王族、ロニアとマキナが立ちふさがるのであった。


 

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