第14話

 北方の小国、アルタイル王国。

 確か、ゲームでも特に触れられることなかった小国の王女様とのファーストコンタクトは実に素晴らしかった。


「……恋した、と?」


「はい、そうです」

 

 ミリオネのいた部屋から退出し、父上のいる執務室にまでやってきた僕はとんでもない提案を口にしていた。


「僕は今、うちに来ている王女であるミリオネのことを気に入りました!あの子に恋したと言ってもいいです。出来れば僕はあの子と婚約したいです」

 

 僕が望むのはミリオネとの結婚。

 ミリオネは良い子だったし、個人的に好感の持てる少女だ……正直に言って彼女が若すぎることもあってまだ好きという感情にはならないが、そもそも王族に恋愛などない。

 あの子と婚約できるのなら万々歳だ。

 

 何よりもその良さが彼女の国だよね。

 ミリオネと婚約して、アルタイル王国に良ければ僕の人生の目的の大多数が成功すると言ってもいいくらいの状況になってくる。

 ゲームにも出てこなかったあの国であれば大した問題もなく一生を過ごせる可能性が非常に高い……少なくともここよりは遥かに!


「……我が国へとの得が」


「あの子の立地はそこまで悪いものでもないでしょう?やりようによっては海洋において力を発揮できる存在になれると思いますよ?」


「……それだけの存在に成長させるのにどれだけの金と時間と労力がかかると思っている。うちの国との交流が出来たくらいで国が急速に発展するものか……別にお前が向こうの国に行くのならともかく」


 お父様の冗談交じりの言葉……だが、それを僕は実行しようとしているのだ。

 成長の方ではなく、僕が向こうの国に行く方を……というか、成長の方は実行する予定はない。


「え?自分が向こうの国に行くつもりですけど?」


「……ッ!?それはダメに決まっているだろうッ!!!」

 

 何を言っているんだ?こいつは……そういわんばかりの表情で告げる僕を見て驚愕の表情を浮かべ、体を震わせながらお父様は口を開く。


「ふぇぇぇ?」

 

 さてはて……ここからが僕の交渉の腕の見せ所。

 何とかしても辺境の安定暮らしを手にしてみせる……ッ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る