第9話

 僕が転生した先はゲームの世界でした。

 それもかなりハードな。


「ふふっ、お姉ちゃんが完璧に魔法について教えてあげますわ!」

 

 だが、そんなくだらぬ現実はさておいて……男であれば、いや!人類であれば一度は憧れたことがあるであろう魔法の習得。

 今、僕はそれをやろうとしていた。


「うん、お願い。お姉さま」

 

 王宮の中にある大きな中庭……魔法や剣術の訓練にも使えるほどに広い中庭で僕とお姉さまはベンチに隣り合って座り、魔導書を広げていた。


「魔法とは神様からの贈り物ですわ。神様を信じ、魔法への理解を深めていけば自ずと魔法の腕は上がっていきますわ。ある日、突然魔法の使い方を本能で理解するのよ」

 

 魔法に関する設定はゲームでの話もあったのである程度は理解している……いや、理解はしていないかも。

 なんて言ったってゲーム内で魔法の詳しい説明はなく、魔法はレベルが上がるとマジックポイントがもらえ、それを割り振ると魔法を覚えることが出来るという理論など何もないゲームシステムでしなかったからだ。

 

 恐らくレベルもマジックポイントも可視化されないこの世界だと時間経過で勝手にレベルがあがり、勝手にマジックポイントが割り振られ、ある日突然魔法が使えるようになるのだろう。


 ちなみに主人公は無信仰者。

 神なんぞくそくらえの精神で生きる野蛮人だったのにも関わらず魔法は使えていたので、信仰心と魔法の腕はイコールではないだろう。


「お姉ちゃんはロニアの考えなんて手に取るようにわかりますわ。今、ロニアはこう思っているはずですわ。僕は神様より魔法を与えられたはずなのになんで未だに魔法の使い方が何もわからないんだろう、って」


「……うん、そうだね」

 

 僕は自信満々なお姉さまの言葉に頷く。


「ふふふ。当たりですわぁ!でも、その心配はいらないですわぁ!ロニアは虹に黒の魔力を持った天才児!絶対に大成できますわ!一番最初の魔法はこの水晶に触れないと使えるようにならないんですの!」

 

 お姉さんは自分が着ている服の中に入れ、お腹のところで隠していた水晶を取り出す。


「これに触れると眠っている魔力の流れが解放され、魔法が使えるようになるんですの!」

 

 お姉さまが取り出したのは封印を解除するための魔法が込められた水晶。

 子供の内から魔法を使うのはリスキーであり、自身の保有魔力が最も伸びる幼少期は魔法を一切使わない方が良く伸びる。

 そのため、幼少期の子供が魔法を使わないよう魔力を封印術で封じるのだ。

 この水晶はその封印を解くためのもの。


「さぁ、触れるんですの」


「うん」

 

 僕が未だにお姉さまの温かい体温が色濃く残っている水晶に触れると。


「いっつ」

 

 頭に流れる鋭い痛みと共に魔法に関する知識、使い方などが濁流のように流れ込んできた。

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