第15話

 僕はお父様を前にして熱弁を振るう。


「今後、我が国が世界の覇権を握るのであれば海上覇権は必要不可欠です。歴史を紐解いてみれば世界の覇権に近づいた国のほとんどがどれも海上における優位性を持っています。我が国は世界最高峰の陸軍大国でありますが……海だとそれほどの力は持っておりません」


「……」


「古今東西貿易の主要を担うのは海運です。海運を握れぬものに覇権はありません」


「……そもそも我が国は世界の覇権など」


「この国の現状、歴史を考えるのであれば世界の覇権を狙って拡大するほかありません。既に我が国の歪は巨大化しており、一国で抑え込めるような問題ではありません。領域を広げ、歪を広げてその影響を少しでも抑える以外に我が国の生き残る術がありますか?」


「ふぅー」

 

 僕の言葉にお父様は深々と息を吐く。


「……ここまで調べた。本気、まだ七歳とは思えぬ優秀さ。流石は我が子だ」


 すみません、ゲーム知識です。精神年齢は既に二十歳超えました。


「作れるか?」


「作れます!」

 

 お父様の答えに内心ですごく情けないことを考える僕はそれでも、表ででは力強い言葉で即答する。


「……」

 

 その後、しばしお父様は目を瞑って頭を回し始める。


「……それほどまでにその子を好いたか?」

 

 しばらくの沈黙の後、お父様は再度口を開く。


「はい、好きになりました」

 

 僕はそんなお父様の言葉にそう断言する。


「……そうか、良かろう。向こう側には俺から打診しておこう」


「……ッ!ありがとうございます!!!」

 

 その言葉を聞いた僕は内心でガッツポーズを上げる……勝ったッ!


 ■■■■■

 

 だが、この時の僕は知らなかった。

 この決断が後に、世界を揺るがすほどの物語を作ることになるなど。


「は、はわわわ……私のことが、好き!?」


「……ろ、にあ?お、お姉さまは……?」

 

 僕とお父様のやり取りを聞いていたミリオネとお姉さまの二人が……僕の知らなかった裏ルートにおいて黒幕ポジとして登場する二人の女傑が。


「「……ロニア」」

 

 軽率な僕の言葉を受け、この世界を、歴史を変えるほどの未曽有の混沌の時代を作りあげることになるなど、この時の僕は考えもしていなかった。

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