最終話
急に現れたミリオネはさも当たり前かのように言葉を続ける。
「ロニアはこんな小さな国に収まるような男じゃないですわ」
収まるが?全然収まるが?自らおさまりに行くが?
あと、自分の母国をこんな国呼ばわりしないでやれよ、君を慕っている家臣や国民が泣くぞ。
「ロニアはここを起点とし、大きく成り上がっていくことでしょう……ですが、私はそれを許すつもりはありません」
なんやねん。
「勝つのは私です」
僕は勝つ気なんてないんだけど。
「私の持つ全てで持ってロニアに挑みましょう。そして、私はそこにいるブラコンを拗らせた女を叩きのめし、世界を支配し……そして、ロニアも支配するのです」
ミリオネは恍惚とした表情に支配欲にまみれたどこまでも暗い底沼のような瞳で己が願いを口にする。
「ロニアを組み伏せ、そのまま全てを食べてしまうんです……ふふっ、あぁ、私は負けません。このままただの一夫人で終わらない。私が勝者となるのです」
み、ミリオネってこんな野心溢れる子だっけ?短期間で変わりすぎじゃない?
「何を、ほざいているんですの?勝つのは私ですの」
僕がミリオネの言葉に対して若干引いていると、お姉さままでもかこんな中でそんなことを宣う。
「ロニアの全ては私のモノですの。そうであると、ずっと決まっているんですの……貴方のようなハイエナの入る隙なんてないですの」
「ふふふっ、国の頂点にもいない立場で随分と面白いことを言うのですね?」
「直に手に入るですわ。そちらこそ、こんな小さな国で何ができるんですの?ロニアもいる中で」
「はぁー、もう勝手にしろ」
僕は二人の睨みあいに割って入り、ため息混じりの言葉を漏らす。
「でも、僕が君たちを叩き潰すよ。僕はただ平和に暮らしたいだけなんだ。僕の平和な生活を邪魔するなんて許さない」
僕から距離が近い二人がこれからの世界で争うなんて真っ平だ。
こっちにまで飛び火する。
「何も出来ると思うなよ?」
「全ての檻を破壊してみせますよ?ロニア様。そして、貴方を私が手に入れる」
「ごめんですの。先に私が一人で世界を手に入れてしまうわね?でも、約束通り……この世界の楽園は二人で作りましょう。ふふふっ、楽しみですわ」
……クソ、全然怯まないよ、こいつら、
あと、お姉さま。約束ってなによ。そんなの僕っばご存知ないのだけど。
「……はぁー」
どこまでも好戦的で、殺意を漲らせる二人に対して僕は深々と溜息を吐き、夜空を見上げる。
時刻は既に暁を迎えようとする中で、夜空はどこまで明るく輝いているのだった。
■■■■■
ロニアの軽率な行動はゲームでもついぞ活躍しなかった二人の天才を目覚めさせた。
完全に覚醒した恋と愛に生きるその二人が作り出す渦がゲームのシナリオを、この世界を変える大きな渦となることをロニアは自身の感性によってどこか予知するのだった。
悪役貴族に転生した僕は中立国家で安心に暮らしたい~平和に暮らすため、大国から小国へと逃げてきた僕をブラコンで愛の重い姉が追ってくるんだけど……ゲームの主人公を含めた世界各国の英傑を伴って~ リヒト @ninnjyasuraimu
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