第5話

 突然のお姉さまの質問に対して答える僕は困惑の声を上げる。


「そもそもとして、僕たち王侯貴族は己の恋愛よりも利益重視だろう?僕がこの国に来たことは結果的に良かったでしょう?」

 

 ちょっと僕の想定を超えてこの国は世界のトップレベルへと駆け上がっているけどね、国力的にも影響的にも。


「私は貴方があの王女に惚れ込んだから婚約したと聞きましたわよ?」


「僕の先見の明が父上を超えていた、ただそれだけのこと。僕は腹黒い貴族の一人だよ?嘘の一つや二つくらい自由に使うよ」

 

 嘘である。

 僕の先見の明はそんな優れていない、たまたまというしかないだろう……しかし、結果的には大成功になっていた……ローレシア王国的には。

 僕的にはちょっとだけ微妙とも言える。

 こんな目立つつもりはなかったし、だからこそ恋愛という理由を使ったのだから。


「既にレアンドリュー帝国への楔にも成れたし、ローレシア王国が輝くための重要な一因になれた……僕はこれ以上を望むことはないよ。後はここでのんびり暮らすよ。これ以上の膨張は危険であり、ローレシア王国の拡大にも悪影響を与えるかもだし。残りは僕がここで楽隠居生活を決め込むよ」

 

 なんか僕の思っていた形とは違ったが、それでも最終的に楽隠居できる体制は作れたと言えるだろう。

 想像以上に責任ある立場となったが、一応この国は安定した。


「他国から脅かされることのないこの国で僕はぬくぬくと暮らすよ……温泉に釣りに観光に。ふふふ、楽しみが膨れる。寒冷地であっても問題なく育てられる食物の確保に力を注いでみようかな?」

 

 今からでも楽しみである。

 僕はこの過酷な世界で自分の安定した生活の基盤を作り出すことにしたのだった。


「そんなの許しませんわ」

 

 だがしかし、そんな僕の願いをお姉さまは一瞬で否定する。


「……え?」


「私まで騙す必要はないですわ」


「……ちょっと?」


「えぇ、全くです」

 

 そして、そんなお姉さまの言葉に会話へと急に登場したたミリオネも続くのだった。

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