第25話

 慌てた文官に連れられる形で急遽来国としたというお姉さまの元へと向かう僕。


「……ん、ん?」


 その途中。

 僕はここ、アルタイル王国の首都に己の知らぬ大量の人間の気配を感じ取り、疑問の声を上げる。

 どんどん嫌な予感が高まり、今すぐにでもこの場から遁走したい気になるも、なんとかお姉さまの元まで僕は向かう。


「あっ!ロニアぁ!待っていましたわぁ!」

 

 お姉さまに待機してもらっていたという中庭隣の一番豪華な応接室へと入った僕をお姉さまが立ち上がって笑顔で歓迎してくれる……僕が今すぐにでも帰って?と言いたいところである。


「それで?何の用?」

 

 お姉さまの座っているソファの対面に置かれているソファへと腰を下ろした僕は疑問の声を上げる。


「ふふふ。今日はちょっとしたサプライズを用意してきたんですわ!」


「……サプライズ?」


 僕はお姉さまの言葉に嫌な予感を覚えながらも首をかしげて答える。


「これですわ!」


 内心嫌な予感を抱える僕をおいてお姉さまは再び立ちあがり、中庭に面している窓にかけられていたカーテンが開かれる。


「……は?」


 その先にあったものはなんであるか。

 カーテンが開かれた先にいたのは数十ものたくさんの人たちであった。


「私が声をかけ、多くの人を集めてきましたわ!全員がロニアのために力を貸してくれる人ですの!」 


 そこにはちらほらゲームで見たことある人間もいるし、この世界に来てから初めて知ったものもいる。

 ここにいる人たち全員の共通点を上げるとしたらべらぼうに優秀であるということ。

 極めて優秀な人間が数十名。

 これで驚かぬ者はいないだろう。


「……ん、……はっ、いや、勇者……ンごっ!?」

 

 だが、何よりも驚きなのはお姉さまが連れてきた人たちの中に混ざっている一人の男。

 将来、勇者として君臨することになっているゲームの主人公さまもその一員に混ざっていたことである。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!?」


 深い深い雪に閉ざされた銀色の世界。

 心安らぐ温泉と海を自由に駆け抜ける様々な魚を狩ることの出来るこのアルタイル王国に安住の地を築き、平和な生活を送るという僕の夢は夢としてどこかへと消えてなくなってしまいそうな予感を僕は感じ取るのだった。

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