第11話

 魔法が使えるようになり、王族として大勢の前で生活するのに僕が慣れてきた頃。


「……逃亡一択だよね」

 

 僕は自分に与えられた部屋の中でこれからどう動くのかを一人、考えていた。


「まず、僕は死にたくない」

 

 前世において、僕は人生がこれからってところで人生に幕を閉じ、早死にしたのだ。

 確か、ゲームにおいてロニアの享年は17歳。

 ゲームのまま話が進んでここでも早死にすることになれば前世の17も合わせてもなお、僕が生きる時間はたったの34年。

 日本人の平均寿命の半分にも満たない。

 流石にそれは御免被る。


「……ゲームのルートから外れるのは確定として、それじゃあ実際にどう動くかと言う話ではあるよね」


 僕の今世の生まれ故郷であるローレシア王国。

 この国は数年以内に拡大路線にかじを切り、たった一年で多くの国を傘下に収め、ローレシア帝国となる。

 この帝国の存在はゲームに大きな存在を与え……当然、帝国には多くのイベントに登場する。


 そもそもこの帝国にいるだけで常時爆弾状態と言っても良いのかもしれない。

 かといってこの国が他国を侵略して帝国化するのを防ぐのも無理だろう……そもそもの国際情勢が今、良くないのだ。

 ローレシア王国は必要に駆られて侵攻しているだけなのだ。


「国を出るのが一番か」

 

 結局のところはこれだろう。

 僕が長生きするのを目標とするのであればまずやるべきなのが国外脱出になってくる……行き先はどこかの辺境である必要があるだろう。

 主要国はどこも爆弾を抱えているし。


「なーんで、王族に産まれたんでしょうか、僕は」

 

 一応僕の兄として、今は海外に滞在しているかなり年が上の兄がいる。

 ゆえに僕は次期皇帝ってわけでもないが、それでも十分皇位も狙えなくない第二王子。

 結構重要な立ち位置にいる僕がどこか辺境に飛ばされるとかかなりの高難易度だ。


「でも……やるしかない。僕の目標のために」


 僕の目標は簡単。

 今世こそは長生きする。

 平和に穏やかに、妻と子供に囲まれ、穏やかな時間、ごく一般的な幸せを手にする。

 僕は前世に出来なかったかなり難易度の高い普通の生活を手にするため、心を燃やすのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る