第12話

 今後の方針を決めた僕の耳に……なんたる僥倖か。

 ローレシア王国へと北方の小国の国王とその王女がやってきたという話が耳へと入ってくる。


「……『黒の世界』」

 

 黒属性の魔導。

 その効果を簡単に表すと『塗りつぶすこと』……いまいち要領の得ない効果を持った魔導だ。

 そんな属性の魔法において、僕が使える初歩の魔法である『黒の世界』を発動する。

 

 名前は強そうに見えるが、その効果は攻撃よりも偵察向き。

 大量の魔力を使いはするものの、それでも一部範囲内の構造を把握することが出来るという破格の効果だ。

 

 これを使って王城の全てを確認していき、僕の知らない背丈、体格を持った少女を探していくだけ……これでとりあえずは小国の王女を見つけられるだろう。


「……」


 王城に子供は少ない。

 小国の王女と思われる少女を僕は直ぐに見つけることが出来た。


「そこだね」


 その少女は王城内のとある一室の中にいることが確認できた……よし、中庭に面する窓はあるね。素晴らしい。

 これなら初対面イベントを強引に起こせる。

 

 僕は一度中庭に出て、手に持ったボールを回し、投げ、蹴り、様々な技を見せながら自分の身の周りで操り続ける。

 たまに僕がしている一人玉遊び……これをしばらく続けた後。


「あっ!やばっ!」


 明らかにもミスった!というような仕草で僕はボールを飛ばし、件の小国の王女が滞在しているであろう部屋を狙って飛ばす。


「……しっ」


 その目論見は大成功。

 僕の飛ばしたボールはその部屋の窓を割って中へと入っていく。


「……よっと」

 

 それを確認した僕は魔法を使って身体を強化。

 二階ほどの高さを跳躍し、僕の飛ばしてボールが盛大に窓を割ったことで足をかけらるようになった部屋の窓ぶちへと僕は足をかけ、部屋の中へと視線を向ける。


「あれ?君は誰?」


「……ふえ?」

 

 予想通り。

 僕は自分の知らない少女……急に自分が滞在していた部屋の窓ガラスを割って中へと入ってきたボールを手に持って困惑の表情を浮かべていた少女へと僕は声をかけるのだった。

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