第9話
リリア殿の会談を終え、自室へと戻ってきた僕。
「さっきの、会談はどういうつもりなの?」
そんな僕は早速と言わんばかりに自室のベッドでミリオネから詰め寄られていた。
「あの内容じゃ実質的に属国化。国内に敵国の兵がいて、自国の産業とインフラを握られている状態で独立しているとは言い難い。一見こちらが有利に見えるけど、そもそもこちらの独立が危うい状態なら意味ない……ただの自国への投資でしかないよ」
「んー?別に僕だって何の勝算がないわけじゃないんだよ?」
「……そうなの?」
「いや、皇帝が死んだら何もかもが意味ないよ?必要になるであろう金銭は先に帝国側がこちらへと支払い、そのあと。こちらの準備が出来次第人を呼んでもらう。準備期間は半年以内……んで、だよ?この半年の間に皇帝が死んだらどうする?」
「えっ……?」
「計画の実行前に皇帝が死ねばすべてご破算。進めていた計画も一時停止するほかない。喪にふくさないとね」
「ほ、本当に皇帝は死ぬの?あ、あの皇帝が、半年以内に……?なんでそんなことわかって、というかやっぱり博打過ぎるよ!」
「死ぬさ。見たことあるから言っている」
ミリオネの言葉を受けてもなお、僕はうまく行くと断言する。
ゲーム知識で知っているというのも当然あるが、それ以上に一度僕が皇帝陛下へと実際に会い、抱いた感想でもある。
……僕が七歳になるよりも前の時。一度だけ会い、軽く言葉を交わしたのだ。
そこで見て、話して、抱いた僕の確信だ。
あの人は既に自分の死期を悟り、まだ弱い一桁とは思えぬ僕を見て絶望していた。
『帝国の存続だけは頼む……己が死後を見れなかった愚か者の後始末を、どうか』
何もかもを諦め、他国の餓鬼に縋るまでになっていた弱き老人の姿を思い出しながら僕はミリオネを前にはっきりとした確信でもって宣言する。
「どこまでも聡明な皇帝が残したガラクタをコントロールするくらい大した問題じゃないよ」
強力なカリスマの手で急拡大した帝国の命運など滅びしかない。
若気の至りに気づきし時にはもはや止めらぬ自国の狂気。
聡明さに欠ける己が子供たち。
自分の残したあまりにも巨大な帝国を前に、誰よりも聡明な天才であった皇帝が予期した滅びを止めることなど帝国に出来ないだろう。
「僕に任せてくれて構わないよ」
長引いた会談のせいですっかりぬるくなってしまったお酒を口に含みながら……流石にぬるいな。魔法で冷やすか。
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