第10話

 僕の発案で始まったレアンドリュー帝国とアルタイル王国の取り決め。

 何の問題もなく帝国より大金が送り込まれ、アルタイル王国の方でもレアンドリュー帝国を受け入れる準備を始めていた。


「よく簡単に受け入れて貰えたな……」


 僕はそれら一連の流れで生まれた仕事をこなしながらぼんやりと会談後、アルタイル王国内で行われたやり取りを思い出しながら独り言を呟く。


 リリア殿との会談の結果。

 それを実際に行う上で障壁となるのはアルタイル王国の国王並びに諸貴族に受け入れて貰えるのかと言う点だったのだが。

 ミリオネが頑張ってくれたのか、特に問題もなく受け入れられた。

 

 実に喜ばしいことではあるが、それでも面倒な交渉が控えていると身構えていた僕にとって肩透かしとなった。


「ふふっ、うちの国の人間は優秀な人間ばかりじゃないのよ?普通に破格の結果。うちに圧倒的有利な結果だ!と大喜びしていたわ」


 そんな僕のつぶやきに答えるように ミリオネが口を開く。


「えっ……?」


「私の父である国王の方は今回の件の危険性も理解していたけど、未来あるものに任せるって私に伝えて終わりだったわ」


「なるほど……?」


 来たばかりのぽっと出の餓鬼に全てを任せると?どんな精神状態やねん。

 この世界の国王たち、みんな病んでいるのかな……つら。


「まぁ、そう言ってくれるのであれば全力で甘えるけど」


「甘えるのはこちらじゃなくてあちらのような気もするけど……それで、兵士たちの修練はもう始めちゃって良いのよね?」


「良いよ。一応僕の国も軍事大国。僕の知っている鍛え方でも問題ないと思うよ」


「それなら良いのだけど……実際のところレアンドリュー帝国とローレシア王国を比べた時、どれほどの力の差があるの?」


「まず大前提として大国同士の戦争は基本的に一騎当千の強者をどう扱うかが焦点となる」


「そうなの?」


「そっ。どんなに戦略に優れてようとも、一人で軍団を壊滅させるような敵がいればどうしようもない……大国同士の戦争において重要なのは一人で戦略をひっくり返すような一騎当千の化け物をどう扱うかとなる」


「一騎当千の化け物……そんなのうちの国には」


「いるでしょ」


「えっ……?」


「君の前にしっかりといるじゃん。僕だって一騎当千に匹敵する英傑が一人だよ?」


 圧倒的な才覚を持った神童で、将来。ローレシア王国が領土を急拡大させる際の原動力。

 それがロニア・ローレシアという男であり、その身に宿る僕もまた天才。

 前世で結構ガチで剣道をやっていたこともあり、僕は現段階もうそこそこ強いのだ。

 ローレシア王国内で僕より強いのあと一人くらいだし、そいつもあと少しで抜けると思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る