第8話

 僕の口から出てきた怒涛の提案。

 それに対して一時的に停止しているリリア殿へと


「この一件を理由にレアンドリュー帝国とアルタイル王国の関係がより一歩。進んだものになると私は信じている。リリア殿もそう思ってはくれないだろうか?」


「そ、それはどうでしょう、か……」


「ふむ……?何か相異か?」


 歯切れの悪いリリア殿の言葉へとかぶせるように間髪入れず僕も口を開く。


「私としては母国であるローレシア王国を頼ってもいいが」


「……ッ」


「それでも長年アルタイル王国の良き隣国であるレアンドリュー帝国を頼った方が双方得であると考えたのだが、どうだろうか?まだ私は若輩の身。何か違うと思ったところがあればいつでも申してもらって構わない」


「いえ、そんなことはございませんとも」


「そうか。であるのならば良かった。ならば良いな?」


「そうですね……細かい条件などはこれから決める必要があるでしょうが、良いでしょう。ローレシア第二王子殿下のご提案を受け入れたいと思います」

 

 僕の言葉に頷くリリア殿。

 彼女の思惑としてはまだ年若く、場数もこなしていない僕に対して不意打ちで会談をぶつけ、動揺を誘うと共に寝不足も誘い、僕をやり込める作戦だったのだろう。

 

 だが、この作戦には一つだけ欠点がある。

 それはデバフを受けるのは何も僕だけではなく、リリア殿も等しくパフォーマンスの低下を避けられないだろう。

 今日の為にしっかりと休息を取ってからここにいるだろうが、それでも多忙な仕事に追われるリリア殿としては夜遅くよりも昼間の方がパフォーマンスとしては良いだろう。

 

 万全でないパフォーマンス。

 そんな中ぶつけられた大量の情報に若干脅しも入った僕の言葉。

 彼女は自らの策に溺れるような形で僕の提案を頷いた……圧倒的にアルタイル王国が得するであろう提案を。

 

「そう言ってくれて感謝するリリア殿。これらかも両国は固い絆で結ばれ続けるだろう」


 まぁ、でもしょうがないのかもしれない……今回の僕の提案はゲーム知識によってある程度未来が見えているからこそ出来る一手だったし。

 僕はそんなことを考えながらリリア殿と固い握手を結ぶのだった。

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