第4話

 懲役七年。

 規則によって狭い空間へと押し込まれ、家族以外とまともな交流の無かった僕は七歳となり、ようやく僕は外へと出ることが許可された。

 とはいえ、王族であるからそこまでの自由はないんだけど。


「……おぉ」


 だが、それでもこの七年間ほとんど閉じこまれていた僕としてはそれだけでも感嘆ものだ。


「案外驚かないのだな……マキナはそれはもう大はしゃぎしたものだが」

 

 豪華な馬車に乗り、異世界の街並みを見て感嘆の声を漏らす僕に父上が、この国の国王であるロガルダ・ローレシアがお姉さまの名を引き合いに出しながら僕へと声をかけてくる。


「いえ、十分はしゃいでいますよ、お父様」

 

 僕の想像よりも遥かに栄えているこの国の王都。

 しかし、だからと言ってそれは現代の地球と比べればはるかに文明度は劣っている。

 パッと見中世とか近世くらいに見える。


 当然異世界の街並みを前にして僕のテンションはぶちあがっているが、前世においてここよりも栄え、もっと多くの人が蠢く現代の地球を知っている僕からすると、お姉さまほどの驚きはないだろう。


「個人的には街もそうですが……それよりもこれから触れる魔法の方が興味ありますね」


「魔法か……ふふっ。懐かしい。我も七つの時には心躍らせたものだ。教会にはもうすぐつく。そこで神より頂けるはずだ」

 

「えぇ、楽しみです……ッ!」

 

 七歳となり、外に出れるようになった僕がいの一番に向かうこととなったのは教会。

 この世界における世界宗教であり、この国の国教でもあるブレノア教の教会へと今、父上と同じ馬車に乗って向かっているのだ。

 

 この世界だと魔法は神より与えられたものとなっている。

 すべての子供は七歳の頃に教会へと赴き、魔法を授かるのだ。


「作法はしかと学んでおるな?」


「一応僕は神童と呼ばれるほどに優秀ですからね。問題なく履修しています」


「ふっ。自分でそれを言うかね?……本番と練習は違う。既に教会には多くの貴族が訪れ、お前を待っている。人の多さにビビるなよ?」


 この国の王族は七歳となると同時に教会の方へと向かい、そこで魔法を頂く共に社交界デビューを果たす。

 僕がブレノア教の教皇の儀式によって神から魔法を与えられるのを見るため、既に教会には多くの貴族が訪れていることだろう。


「わかっていますよ……父上」

 

 僕は父上の言葉にぎこちなく頷く……人の多さには慣れている。

 しかし、王として大勢の人の前に期待されながら立つ経験などないため、僕は普通に緊張していた。

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