第5話
レアンドリュー帝国。
歴史上もっとも偉大な賢帝と称されたアレクファイヤ皇帝によって急速に拡大し、世界帝国となり、フリア大陸において、現在最も強き国。
だがしかし、そんなレアンドリュー帝国であるが、帝国の根幹とも言えるアレクファイヤ皇帝はもう既に御年60を超える。
既にその輝きと指導力には衰えが生じ始めており、現在は病が故に昏倒状態。
長らく表舞台に立っていない。
そんな中、レアンドリュー帝国内部では日夜皇子たちによる泥沼の帝位継承戦が行われており、未だ次期皇帝も決まらぬ状況。
かつての世界帝国。
今なおフリア大陸最大の国家たるレアンドリュー帝国ではあるが、その陰には既に崩壊の影が見えだしている。
「……僕に何の用だよ」
国内情勢で忙しいはずの帝国の人間が一体僕に何の用だろうか?
そんなことを考えながら、こんな夜分遅くに会談の場を設けろと要請してきた帝国の大使が待つ会談の場へと僕は訪れた。
「初めまして、ローレシア第二王子殿下」
ミリオネを伴って応接の間に到着した僕を出迎えるのは帝国の大使であるリリア・トールアレイクとその補佐官であった。
「あぁ、初めまして。レアンドリュー帝国大使リリア殿」
僕をローレシア王国の第二王子と呼ぶ帝国大使へと僕は手を差し出し、互いに握手を交わす。
「雪景色ばかりで気候の厳しいアルタイル王国へとその身を寄せ、お忙しいであろうと察せられるお立場の中、本日はお時間を頂きありがとうございます」
「うむ。辛労の身。忙しき仕事をこなして今よりその疲れを癒さんと床に就こうとしていた身ではあるが、その名声がどこまでも響く帝国からの大使の会談の申し出とあらばいつでも歓迎だとも」
互いにチクリと嫌味を言い合いながら、それでも和やかな雰囲気で互いに席へと下ろし、向かってあって口を開く。
「ローレシア第二王子殿下といたしましてはアルタイル第一王女殿下とのご婚約おめでとうございます」
「ありがとう、リリア殿。私も近々アルタイルに連なる者となる予定だ。隣国として仲良くしていただきたい」
「えぇ。ぜひともよろしくお願いいたします。私がこの国を始めて訪れたとき、この国の雪景色と寒さには驚かせました。帝国も寒冷な地ではありますが、それでもこの国は及びません。温暖な地より訪れたローレシア第二王子殿下には身に応える寒さでないかと愚行いたしますが、大丈夫でしょうか?」
「何の。私も神童と呼ばれた身。この程度の気候に負けるほど惰弱ではないとも」
最初はただの前哨戦。
本題に入ることもなく、互いに軽口を飛ばし合うのだった。
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