第13話

 僕と父上の会談。

 最終的にそこではローレシア王国が経済支援を受ける代わりとして、ローレシア王国は以後三十年間アルタイル王国の港の一部を決められた使用量を支払う限り軍事的に利用することを認めるというもの。


 アルタイル王国は大国からの支援を獲得し、ローレシア王国は念願であった港を手に入れる。

 両者得をするような形で会談を終えた。


「ふぅむ……」


 そんな会談を終えた僕は一人、ローレシア王国がほこる美しくも堅牢なる王都、メッテルーテを歩き回っていた。


「むむぅ……やはり農作物の違いは大きい」


 メッテルーテを歩き回る上で見ているのはそこの活気と売り物。

 改めて自分の生まれ育ったこの国を確認し、アルタイル王国との比較を為しながら歩いているのだ。


「改めてとんでもない国だ……」


 肥料を撒かずとも大量の作物をつけてくれる肥沃な大地に、豊富な地下水と国中を流れるいくつもの河川に天からの恵みたる雨。

 どれだけ汚しても魔法で浄化可能な水に数多の鉱山より取れる豊富な資源。


 何もかもに恵まれた肥沃な大地。

 そして、それを他国から守る優秀な軍隊と防衛に徹底された完璧な戦略。


 まさに完璧とも言えるような国であり、唯一のとある欠点さえなければ完全無欠の国であっただろう。

 ……まぁ、自分の生まれ育った街への評価はこの当たりとしてそろそろアルタイル王国との比較を……。


「あっ、おっちゃん。串焼きひとつ」


「あいよ!」


 僕は王都内に並んでいる屋台のひとつから串焼きを一本買い、それを食べながら王都を巡る。


「おいしー」


 アルタイル王国とローレシア王国の比較と言っても国の規模と土地の性質が違いすぎてあまり参考にならないな……。

 少しは役に立つかな?って思ったけど、諦めてこの国の中で自分の味方を作る方針に切り替えようかな。


「ロニアーッ!!!」


 僕がそんなことを考えていると、王都内にそれはもう大きな少女の声が響き渡る。


「お姉様!?」


 一体何を考えているのか、自らの姿を隠すことも無くドレスを身にまとって王都を爆走し、僕の名を叫ぶ己の姉。


「はぶ!?」


 そんな彼女に僕は抱きつかれ、悲鳴をあげるのだった

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