修学旅行へ
21.序盤から大失態♡
「……は?」
時計とにらめっこで、俺は何秒か固まっていた。
だって……え?
申し訳程度に五時台にかけておいたアラームは、とっくに役目を終えたと認識して静かになっていた。
でも、だからって……。
「十二時は無い、だろ……」
****
「……」
結局……俺は一人、バスに揺られていた。
当然新幹線なんかのお高い乗り物は使えないので、地道に安いバスを乗り継いだり歩いたりなんかして向かうしか無かった。
自分を過信しすぎずに起きたままでいれば、無駄な出費も抑えられたのに……なんて思っても、もう何もかも遅かった。
この際だから諦めて行かないって選択肢も頭によぎったけれど、
「ん……」
通知を知らせるバイブ音がポケットから伝い、俺はスマホを取り出して見てみる。
中学までは意地でも買わなかったけれど、流石に高校生になってからは必需品となっていて授業でさえも使う場面があったりして、仕方なく買ったコレだったけれど……。
実際連絡を取ってるのなんて、真吾と
かと言って便利じゃない訳では無くて、使える奴ではあるんだけれど……調べ物したりゲームしたりとがよく分からなかったから、こいつの便利さを十も発揮させてあげられてない気がする。
真吾の方も、俺だけ買うんじゃ不公平だからと買ってはみたけれど、たまーにスタンプが送られてくるくらいで、そっちの方も結構持て余しているみたいだった。
兄弟揃って機械に不慣れなんて、この時代先が心配ではあるけれど……俺もお世話になってるおばちゃん達のネットワークにはまだまだ機械の入り込む隙は無さそうなので、しばらくは大丈夫だろう。
いや……それよりも。
どうして今まで気づかなかったのかが不思議な位なのだけれど……彼氏のクセして俺は、
勿論先生と生徒って関係で連絡先を交換するのは危うい所もあるけれど、それを気にするのなら屋上であんなに頻繁に会ったりしない訳だし、そもそも付き合ったりなんか……いや、付き合うのは前だから該当はしないのか。
とにかく、学校でしか会えない上に個人的な話は二人きりにならなきゃ出来ないなんて不便すぎる事は今までで十分覚えてきた。
……次二人になった時にでも聞いてみるか。
「ぅおっ……」
それよりも……スマホに表示されている通知の量が大変な事になっていた。
百は超えている……のか?
昨日の夜には全部見て無くしていたのに、それに俺にはさっきの三人くらいしかちゃんとやり取りしている奴も居ないのに。
真吾が構って欲しくてスタンプをたくさん送って来たとしてもせいぜい三つ……なんて考えながらもアプリを開くと、その通知がたった一人の仕業だという事に気づく。
……名高。
『しんちゃんさっきはありがとう!』
『明日楽しみだね!』
『しんちゃんおやすみ〜』
『しんちゃんおはよう!』
『起きてるー?』
『わたし今着いたよ!』
『待ってるね』
『しんちゃん大丈夫?』
『バス乗ってるからねー!』
『しんちゃん!!』
『あと五分で出発しちゃうよ!!』
『しんちゃん来てくれないの?』
『しんちゃん居ないのやだよ』
『見たら返事してね』
『しんちゃん居ないの我慢できないよ…』
『わたし帰ってしんちゃんとこ行くね』
そしてその後も、俺の事を心配して帰ろうとしている内容のメッセージがつらつらと続いていた。
『悪い、寝過ごした。』
『今、バスで向かってる。』
そのたくさんのメッセージに圧倒されながらも、バスの中で音声入力なんて使う事も出来ないので、慣れないキーボード入力で何とかそう返事をすると、機械なんじゃないかってくらい爆速でメッセージが返ってきた。
『良かったぁ〜!』
『心配したんだよ!!』
その後も、いつまでも返って来続ける名高のメッセージに返信し続けていれば、あっという間に夕方になり、何とか旅館に辿り着けた。
……この時間になっても一切返事をよこさない上城が少し気になったけれど、きっと名高に聞いているんだろうし……何より班長だ、色々と忙しいんだろう。
そう結論づけた俺は、まさか上城があんな事になっているなんて……考えもしなかったんだ。
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