36.暑い夏はまだ終わらない♡
「しーんーちゃーん!」
この声は……
「
「やっほー」
「えへへ……」
……まぁ、大体察しは着いてはいたけど。
二人はいつの間にか仲良くなったのかよく一緒に出掛けている様で、今持ってるのが見える大きめのバッグだってお揃いだし、前の夏祭りの時なんかは上城の所で着付けして貰ったみたいだったし。
「なーっち、アレ出して!」
「はい、あゆみちゃん!」
これは流石に急に仲良くなり過ぎな気がしなくもないが……仲が良いに越したことはないので、この際は良しとしておこう。
「聞いて驚くなって事よー?」
それより……アレって何だ?
名高がバッグを漁る中、上城はもったいぶる様に言ってくる。
なんだなんだと思っていると、やがて名高は一枚のプリントらしきものを取り出して見せてきた。
そこに書かれていたのは……『夏季休暇中のプール解放のお知らせ』?
そんなプリントあったかな……なんて首を傾げていると、二人ははしゃいだ様に俺に言ってきた。
「しんちゃん、プールだよ!」
「これは行くっきゃないでしょ!」
****
「わぁ……貸し切り!」
「えへへ、広ぉい……」
「……」
事の経緯を説明しよう。
あのプリントは、一年生の春頃にたくさん配られる中の一つにあったらしい。
が、そんな慌ただしい時期の三、四ヶ月は長く……夏になってもこんなプリントの存在を覚えている生徒なんて、ほぼ居ない訳で。
その頃覚えてないという事は、すっかり夏休みにプールが使えるなんて事実を知らないまま、二年三年と学年が上がり、結局使わないまま卒業する……というのが殆どだろう。
実際、俺も名高のプリントを見ても、思い出しさえもしなかったし。
「しんちゃんも、早く来なよー!」
「そうだよ……っ!」
そんな風にプールサイドで長考していたら、待ちくたびれた二人にそう急かされる。
「……おう」
でも、こんな漫画の中の屋上の様に、俺達以外誰も居ないなんて事……実際に有り得るんだな。
まぁ……解放されるのは水泳部が休んでるちょっとの間だけだし、都合の合う合わないもあるのかも……なんて考えつつ、俺はゆっくりと水面に足をつける。
……つめたい。
「ぅおっ?!」
「あははっ、引っかかったー!」
「ちょっ……あゆみちゃん……!!」
なんて、ゆっくり水に入っていく時間さえ貰えず、軽く水面につけた足は上城の手によって引っ張られ、俺はバランスを崩してあっという間に全身を水の中に放り込まれる。
「っ……ぷはぁっ、お前なー……?」
「しんちゃんのドジー! 毎回引っかかるよねぇー」
「毎回……む……ずるいっ! わたしもやりたい……!!」
「……なーっちもこー言ってるよ? しんちゃん、一回プールから上がって……」
「……断る!」
俺はこれ以上女子二人に絡まれては敵わないので、ぷかぷかとプールの向こう側に移動していく。
「あ、逃げた」
「むー! 卑怯ー!!」
……何とでも言ってろ。
あぁ、でも……さっきのは懐かしかったな。
昔上城とプールで遊んでた時とか、毎回やられてた気がする。
でも……やっぱり俺達二人じゃなくて、もう一人くらい居た様な気が……。
「あら……
「……えっ?」
そんな事を考えながらぷかぷかと浮いていたら、いつの間にか対岸まで着いていたらしい。
そこでよく知る声に名前を呼ばれて目線を上げると……
「
……随分久しぶりに会った様な気がするけれど、やっぱりいつもと変わらない様子の麻結さんが、そこに居た。
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