45.調査パート♡

『……二人がかりで、とっておきの罠に落として貰うの!』



「……じゃ、俺はこれで」

「えっ?!……ま、待ってよ!」


 例の発言の後、俺がそんな風に言ってそそくさと帰ろうとすると、焦った中野に止められてしまった。


 だって、何を言うかと思えば……バカバカしい。


 要は俺はその二人との連絡橋的な役割で、二人を利用する為に必要だった訳で、二人が居なければお役御免って訳だろ?


 ……二人だって、そこまで暇な訳じゃないだろうし。


「あ……もしかして、何か誤解してる?」

「……逆に何が誤解なんだよ?」

「やっぱり誤解してる……いい? ちゃんと聞いててね」


 ……それから中野の話したは……到底賢い策だとは思えなかったけれど、万が一成功した時の事を思うとどうしても胸が弾み、俺は了承せざるを得なかった。



****



「えーっ! なーっちそれほんと?!」

「は、はいっ! そうなんですよ……っ!」


 昼休み、人の多い廊下に上城かみしろの良く張った声と、名高なだかの頑張った声が響く。


「でも……そう上手くいくのか?」

「大丈夫大丈夫!……秘策があるから!」


 そんな二人を少し離れた物陰から観察しているのは、俺と中野だ。


「秘策、ねぇ……」

「あ、疑ってる? アタシの知識量、舐めてかかったら痛いよぉー!」

「……、だろ」

「あーっ、漫画バカにしたなぁー?!……下川しもかわだってオタクのクセに!」

「オタクは関係無いだろ……って、ほら」

「ん?……あっ!」


 が、すぐに忘れて言い合いになっていると、案の定その間に事は起きていた様で、俺は一旦その論争は置いておく事にして中野に二人の方を向かせる。


「どうしたんだ、そんなに騒いで」

「あっ、先生! 実はなーっちがこんな書き込みを見つけて……」

「……何?」


 上城が先生に見せてる名高のスマホに表示されてるあの書き込みは……勿論作り物だ。


 どこでその技術を培って、実際使ったのかどうかまで一切の事を出来れば一生知らないままで居たいけど……とにかく、頼んだ通りに名高が一晩で作ってくれた。


 その内容は……噂と同じ。

 十年前位にこの学校で女子高生が人を殺したんだと言う書き込みと、自分もそれを知っていると言う複数の書き込みだ。


 しかも否定意見や関係無い書き込みまで精巧に作られていて、いかにも『それっぽい』作りになっているから脱帽物だ。


「……ちょっと来なさい」


 そして……先生の選定も実は済ませていた。


 十年前から居る先生は少なかったけれど、その中でも生徒に自分から絡みに行く性格で、義理堅い人物像に当てはまる先生……ちゃんと居て良かった。


「はーい」

「……はい」


 散々大きな声で騒いだから、そんな風に連れて行かれる二人に廊下にたまっていた人だけじゃなくて教室からも様子を伺う人もチラホラ居て……ここもバッチリだな。


「下川、行くよ!」

「おう」


 適切な距離をとりつつ二人がかりで注意深く観察していれば、ちゃんと廊下の端で止まった三人に追いつく事が出来た。


「えー……とりあえず、どこに書き込みがあるのか教えてくれないか?」

「は、はいっ……」


 そこで先生は早速そんな風に言って、名高はスマホをいじる。


 が……見つからない。


「あれ? 無くなってる……?」

「え?……そんな事無いだろ?」

「いやっ……ほ、ほんとに無くて……」

「……そうだ、履歴はどうだ?」

「すみません……わたし、履歴残らない様にしてて……」


 ……仕組みは前述の通りだ。


「マジ、かぁ……」


 名高の言葉に、先生は頭を抱える。


 まぁ俺もそんな状況になったら頭を抱えるしかなくなる自信はあるけど……申し訳無いけど、今は同情してられない。


「とにかく、今回の事は口外しない様に……」

「……ちょっと待ってくださいっ!」


 疲れた様子で言いかける先生に、中野は容赦なくそう言って割って入る。


「アタシもそこの二人も口外するつもりは無いので!……その代わり、『真実』をおしえてくれませんか?」


 改めて……鬼だな。

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