43.よく知る噂♡
「
「お……
席替えもすっかり終わり、最後にプリントが配られてからさよならの挨拶を終え、すっかり帰りモードになっている教室で荷物をカバンに詰めていると、そんな風に中野が俺に声を掛けてきた。
修学旅行は居たんだとは思うけど行きも帰りも俺の方がバタバタしてたし、中野も頭が良い方だから夏期講習の必要も無くて来ていなかったしで……実質一ヶ月強くらいぶりにはなるのか。
「でさ〜、早速なんだけど超おすすめの小説がありまして……」
「小説か。……珍しいな」
「でしょ? アタシもおすすめされて読んだんだけど……もうすっごくて!」
普段はほとんど漫画でたまにCDとか雑誌とかだからそんな反応をしてみると、中野は興奮気味に……予め用意してあったんだろう、カバンのポケットから一冊の本を取りだしてみせた。
「とりあえず読んでみて、感想聞かせて!」
「……おう」
本屋で買った時に付けてくれる様なあのベージュのカバーが着いていたから題名は確認出来なかったけど、パラパラとめくってみる。
挿絵なんかは無かったからライトノベルとかとは違うんだろう。
やっぱり珍しいな……と思いつつパラパラと続けていると、そのページの中の一つに何か挟まれていてつっかえる。
「……」
ふと、そのページの一文に目が行く。
『────彼女が殺人鬼であると、私だけが知っているのだ。』
何故か酷く心が揺らいで、何故かは分からないけど……これが名作の力なのかななんて浅い感想を
「……オカルト同好会?」
「!」
ふと、しおりの下に小さく書かれていたその文言が目に付き復唱してしまうと、中野はそれに過剰に反応して飛び上がる。
「この学校、そんなのあったか?」
「……」
純粋な疑問だったけど、何故か中野はその言葉に追い詰められる様になってからしばらく黙り込み……やがて、何もしていないのに観念した様に勝手に白状し出した。
「これ気に入ってくれたら、ぜひオカルト同好会にって言う予定でぇ……」
ちょっと恥ずかしそうに言う中野だったけれど……俺はそんな事よりも、とある違和感が湧いて仕方なかった。
「ん? って事は……中野、オカルト同好会の一員って事なのか?」
そんな事一言も……というか、そもそも存在さえ知らないような同好会に入ってるなんて言われたってよく分からない。
そんな感じに頭をぐるぐるさせながら聞いてみると、もう既に開き直ったのか中野は自慢げに言った。
「そう! アタシはオカルト同好会が一人……中野
「……その中野 由梨さんが、どうして俺を?」
「あー……実はね、あと一人部員が居れば正式な部活になれるんだよねぇ……っ!」
「要は水増し要員ってか」
「いや、それだけじゃなくて?!……下川は趣味も合うし、きっと楽しめると思うし……最悪幽霊でも良いからっ!」
「やっぱり水増し要員じゃねぇか」
「そこを何とか!!」
……埒が明かない。
「で……この本は何でそれの関門になってるんだ?」
「あっ、それはねー……実は今、この高校の噂について調べてて、それに近いのがこの本なんだよね!」
「へぇ……」
とりあえず気になった所を聞いてみるとそんな風に返されて、ちゃんと活動している事にまず関心してしまう。
が……さっきの文が現実にある話として考えると、途端に胡散臭くなるのだけど。
「お願いだよー……っ! 部活になれるなら
「……」
うん。
胡散臭くはあっても……そうとなれば話は別だな。
「……とりあえず、見るだけだからな」
「!」
そんな風に答えた俺は中野に連れられて、どこにあるかも分からないオカルト同好会の居所へと向かった。
当然……ほぼ下心からだったけれど。
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