2.幼馴染ちゃん♡
「しーんちゃん!」
「……その呼び方、まだやるのかよ」
「当たり前でしょー?……ほら、起きた起きた!」
「はいはい……ふぁ……眠……」
相変わらずいつも俺の家へやって来るのは、俺の幼馴染でありお隣さん……漫画やアニメではもうお馴染みの様な存在である彼女、
が……実際、ガキの頃から一緒に居る奴に恋愛感情なんて湧く訳も無く、多分お互いに兄妹みたいな存在に思ってるんだと思う。
「ご飯作ってあるんだから、早く食べてよねー?」
……訂正。
姉弟の様な存在、だな。
「ん……美味い。ありがとな、上城」
「……ん。あ……当たり前でしょ!!」
上城は素直じゃないが、実際美味いので俺がそんな風に言えば、口ではそんな事を言いつつも口角をちゃんと上げているのが俺にも分かる。
よく見ると意外と分かりやすい性格をしている彼女だけれど……まぁ、この持ち前の素直になれない性格で色々苦労してきたのを俺は知っているから、この素直になれない幼馴染に、俺だけでも理解者として接してあげられるなら……と、密かに思っている訳だけれど。
……きっとそれを聞いたら、傲慢だって言うだろうな。
実際俺は、知人に対してはかなり傲慢だと思う。
気を許した人にはズバズバと言ってしまうし、少々甘えてしまう部分もあるし。
けれどその分、そいつらが困っていれば手を差し伸べたいと思うし、助けてと言うなら全力で助けたいと思ってる。
……この時代に、暑苦しいだろうか。
でも、あの人は……そんな俺のその心持ちをいい事だと、君の性格は唯一無二だから自信を持って誇れって、満面の笑顔で褒めてくれたから。
「……ご馳走様」
だから俺は……このままでいいんだって思えてるんだ。
「ん。じゃーカバン持って、忘れ物無い?」
「おう」
「よし!……それじゃー、早く行くよ!」
上城は俺がどれだけ寝坊しても、こうやって一緒に家を出るまでしてくれる。
だからか朝に弱い俺も、遅刻するまで寝坊した事は無くなって……どういう事かというと、つまりはめちゃくちゃ助かってるという訳だ。
「おっ! また一緒に登校かー?……はっ、お熱い事でぇ」
が……こういうヤジが今でも飛び交うのは、やっぱり俺がリーダ格のこいつ……
上城までその標的になる理由も無いし、俺は少し遅れてもいいからズラして登校しようとは定期的に言っているのだけれど……
『別にあいつの事なんてどうでもいいし、今更慣れっこでしょ。……それより、ちゃーんとしんちゃんを学校に送り届けられる事の方が大事だもん!』
……なんて言われてしまえば、俺にはもうどうにも出来ない事で。
俺はその優しさと強さに感謝しつつも、どこか甘えた気持ちでそのままにしている事しか出来なかったんだ。
「はーい。皆さん、席ついてー」
そしてこのイジりは、先生なんかの大人や、あいつの友達じゃない他のクラスの奴が居る時には決まって止む。
それがあいつの陰湿な内面を示している様で気分は当然良くないが、やっぱり……ずっとこのまま放っておくのも良く無いだろう。
上城もああは言っていたものの、気分を良くしないのは確実なんだし、何か対策を考えなきゃな……とは思いつつ、俺一人の力では何も浮かばない。
「今日居ない子は……うん、大丈夫だね。……それじゃ、授業に入りまーす」
……やっぱり、頼った方が良いんだろうか。
大人に頼るって、あんまりいい話は聞かないけど……ちゃんと向き合ってくれる人なら、大人とか関係無しに、相談しても良いのかもしれないな……。
「……しんちゃん、消しゴム落としたよ」
「ん、あぁ……ありがとな」
いけない。
とりあえず今は、授業に集中しないと。
……折角通っているのに、単位を落としてしまっては意味が無い訳だし。
「しんちゃん、今日も……」
「ん、何だ?」
「……何でもない」
隣の席の
「やっぱりしんちゃんは、─────────────だね……♡」
そんなんだから、この時……彼女の呟いた言葉を、俺は聴き逃してしまっていたんだ。
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