身近な殺人鬼の噂
41.新学期♡
「……はよー」
前までと同じ様に
「……おはよ」
……
態度は不真面目だったけど毎日学校に来ていたのを鑑みると、本当にもう学校には来ないんだなと実感出来て……迷惑をかけられていた身としては喜ぶべきなんだろうけど、どうしてもやりすぎな気もしてしまって慌てて首を振る。
……これで平和な学校生活を送れるんだから、きっとこれが一番良かったんだ。
実際上城にも危害を加えていたんだし、それに宮地が居ないからか普段は話し掛けて来ない人、数少ない男子なんかもこうやって挨拶を投げかけてくれたりするし……うん。
せっかく新学期でもあるんだし、一旦忘れて気持ちを入れ替えよう。
「しんちゃん、おはよう」
「ん……おはよ、
自分の席の前まで行くと、名高がいつもの様に話しかけてくる。
俺がそれに返事をしながら席に座ると、丁度チャイムが鳴り、それと同時に
麻結さんと会うのは……あの花火以来。
結局誰に見つかる訳でも無く、最後まで花火を見てから、駅前までは行けなかったから……ちょっと手前くらいで別れたんだっけか。
『じゃあ……また新学期にね。
そうだ。
麻結さんはこれから俺の事を名前で呼んでくれて……俺はそんな麻結さんと、敬語無しに話さなくちゃいけないんだ。
「皆さん、夏休みは満喫出来ましたか?」
麻結さんは教卓の前に来るや否や、そんな風に投げかける。
それにクラスの皆が大体前向きな答えを返すと、麻結さんはあのいつもの笑顔を浮かべて言葉を続ける。
「では、始業式が始まるので廊下に男女別に並んで体育館に……と、言いたい所ですが……」
意味深な言い方にクラス中何だ何だとザワザワし出していると、
「……その前に、皆さんの新しい仲間を紹介しておきますね」
新しい仲間……転校生か。
確かにこの時期……新学期にはつきものかと思いつつ、さらにザワザワし出す教室中の空気に乗せられてどんな人が来るのか想像していると、何だか前の方から視線が向けられている事に気づく。
……えっ、麻結さん?
その視線の主は、麻結さんだった。
皆の前でこんな風に不自然に俺だけを気にする動作なんてとらない人なのに……と不審に思いつつ、その意味ありげに投げかけられる視線の意味を考えていると、麻結さんはやがてフイっと視線を逸らす。
「……?」
その視線を逸らす動作と一緒に体の向きを変え、扉の方に歩いていく麻結さんを眺めながら……俺は頭の中にあふれる「?」を処理しきれないでいた。
転校生……俺に何か関係があるんだろうか。
俺の知り合いとか?
中学が同じとかだったら、麻結さんには分かるかもしれないけど……そんな事であの麻結さんがわざわざあんな意味ありげな視線を皆の前で送るだろうか。
あっ……もしかして苗字か名前が同じとか?
それともまさかの……同姓同名?
……と、そんな風に色々考えを働かせている俺の前に現れたのは、酷く見覚えのある少女が、うちの高校の制服に身を包んでいる……そんな姿。
「では、真ん中まで来て挨拶を……お願いしますね」
忘れる訳が無い。
あの……動く度になびく、長い黒髪。
「……
彼女は教卓の前に立つと、そこまで大きくないのに何故か通る声でそう名乗った。
「っ……」
思わず顔を歪め息を飲んでしまうと、その何も捉えていない様に虚空を見ていた目がギョロっとこちらへ向けられる。
どこか既視感のある様な、でも確実な恐怖を感じさせる見開かれた大きな瞳に見つめられて、俺は目を逸らす事が出来なかった。
だって彼女は……確実にしきを壊したのだから。
そんな彼女がこの学校に来る真意……分かるハズも無いけど、でもたった一つ分かる事があるとするなら……そう。
……これから、何事も無いでは済まない。
ニヤッと笑う彼女を視線を交わしながら、俺はそう確信せざるを得なかった。
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