13.ヤンデレちゃんとご褒美♡
「じゃあ四班の人、班員のお名前をお願いしまーす」
「はいっ。……えー、四班は班長がボク……
「はーい」
あの後……名高がちょっと遠慮がちに班に入りたいと言った後、俺はその事を上城に伝え、結局こんな様な班構成になった。
……でも、名高が俺に対してあんな風に弱気になるなんて……そんなに仲間に入れるか不安だったんだろうか。
何だか珍しい一面を見た気がするな。
「しんちゃん、小森呼んできてよ」
「ん?……あぁ、分かった」
それにしても……しきはあんまり名前を呼ばれる所を聞かないから、「小森」と連呼されるのを聞くと、何だか新鮮だ。
「しき、とりあえず……行けなかったとしても良いから、担当決めだけ参加してくれないか?」
「……。うん」
やっぱり相変わらずワンテンポ遅れているしきの返事に確かな違和感を覚えながらも、これ以上悩みの種を増やしてしまっては何か失敗してしまいそうな気がして、気にしないようにしてしまった。
……目を逸らしてしまったんだ。
「班長はボクだから、保健係と食事係、あとは記録係だね。……五人じゃないから副班は要らないみたい」
班員全員が俺の机を囲む様に集まると、上城は早速持ち前のリーダーシップを発揮する。
「記録係って、写真とか撮るやつだろ?」
「そうそう。……あ、簡単そうだからそれが良さそうって思ったでしょ? 残念ながら記録係には班長のお手伝いもやって貰いまーす」
「それ、実質副班じゃないのか」
「細かい所はいいの!……そもそも、ボクが決めたんじゃ無いんだし」
こんな風に、いつもの調子で俺と上城が言葉を交わしていると、他の人が居ると途端に話せなくなる名高と未だ上の空なしきがすっかり置いてけぼりになっている事に気づく。
「……名高は、どれが良いんだ?」
しきの方は反応してくれるかどうか微妙だったので、とりあえず名高に先にそう聞いてみると、話し掛けられると思っていなかったのかちょっと慌てつつも考え込む様に俯いて、俺のシャツの裾を掴んで後ろに隠れる様にしながら口を開いた。
「わ、わたしは……食事の用意とか苦手だし、お手伝いもちゃんと出来ないと思うから……ので、保健係が良いです……」
やっぱり名高はこの人数でも緊張してしまってダメなのか。
まぁ、誰でも俺と名高の出会いの様にかなり特殊な出会い方を出来ると言えばそうでは無いんだし、俺への態度が全員に出来る様になれとは言わないけど……。
……せめてこの班員、俺の大切な友達とは打ち解けて欲しいもんだ。
「……で? しんちゃんはどーするの?」
「ん……そうだな。しきが行けるか分からないらしいから、行けなかった時に影響が少ない方をしきに当てた方が良いとは思うけど」
「なるほどねぇ。……じゃー、しんちゃんが記録係で、小森が食事係……かな?」
「あぁ、そうだな」
その後は順当に決まっていき、結局俺は記録係とかいう暇そうに見えて一番雑用を押し付けられそうな係に就任してしまった。
……まぁ、忙しいのは嫌いじゃないし、特別問題がある訳でも無いのだけれども。
「はーい、一旦皆さん席についてくださーい」
そんなうち、麻結さんの一声に、皆バラバラと席に戻って行った。
俺も席につこうとイスを引くと、
「……しんちゃん」
先に隣の席についていた名高から、コソッとそんな風に声を掛けられる。
「ん……何だ?」
名高はちょっと恥ずかしそうにしながら、小声のまま俺の方に話し続ける。
「わたし……働くの苦手だけど、保健係頑張るから。……だから、ご褒美ちょうだい?」
「……ご褒美?」
「うん」
ご褒美……って、何だろうか。
何か奢れって事か?
手料理で勘弁して欲しい所だけれど……。
……なんて思っていると、名高は目を細めて笑みを浮かべながら言った。
「肝試し……わたしと一緒に、まわってくれない……?」
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