39.先生からのお誘い♡
『今度の花火大会、一緒にどうかな?』
何度も眺めたメッセージ。
そしてそれが……今日。
「……
「ん?」
「一人でほんとに大丈夫か?」
「ん!……行ってらっしゃい!」
「おう……」
こういう時に限ってさっぱり自信が無い。
……いや、こういう時だからか。
「真吾」
「なーに?」
「あー……変じゃないか?」
一応聞いてみると、真吾はちょっとばかしポカンとしていたけれど、やがてニコッと笑って俺に向かって言った。
「大丈夫、ちゃんとかっこいいよ。……ほら、行ってらっしゃい!」
****
「
「麻結さ……」
待ち合わせ場所で待っていると、そんな風に聞き慣れた声が久しぶりに敬語無しで俺を呼ぶのが聞こえて顔を上げると、
「……っ!」
……『先生』って感じのいつもとは違う、大人の女の人の小綺麗な格好というか……でも、ちゃんと可愛い服装で……。
「……どうしたの?」
「えっ、あー……何か、凄いなって思って」
「ふふっ。……よく分からないけど、良かった」
「はは……」
何だか失礼な感想になってしまった気がしないでもないけれど、麻結さんはちゃんと好意的に受け取ってくれて、そんな風に返してくれる。
「じゃあ……行きますか」
「うん。……あ、ちょっと待ってね」
「?」
とりあえず花火ももうすぐだしそんな風に言って移動しようとすると、ふと麻結さんがそう呼び止める。
「一応、近場だから……私、設定を考えてきてるんです」
「設定?」
「うん。私……前の
「あぁ……良いですね」
「ふふっ。間違えないように」
「……はい」
「では……気を取り直して。行きましょっか」
さすがに手は繋げなかったけど……リードするつもりがいつの間にかそんな風に引っ張られる様に着いて行く形で、俺達は予め決めておいた人混みは少ないけれど花火は大きく見える絶妙なバランス感を保ったスポットへ移動する。
……勿論、そんなスポットに誰も居ない訳も無いから気を張らなきゃいけないのには変わりないけど、暗いしある程度人が居るからこそバレにくくなっているのは確かだろう。
「よいしょ……っと」
麻結さんは斜めになっている芝生の上にハンカチの様なものを置いて、その上に腰を下ろす。
「……」
俺もその隣に……ハンカチは敷かなかったけど、適切な距離と思われる間隔を開けて座り込む。
「ん……ちょうど、あと五分くらい」
「……じゃあ、ピッタリですね」
「ふふっ……そうだね」
まぁ、多分真っ当な彼女と彼氏ならちょうどゆっくり会話してる時に始まって丁度良いんだろうけど……残念ながら今の俺達は先生と生徒でもあるので、この間はいささか注意の必要な間という事になってしまうから……。
……いや、それより俺だな。
俺が何を話して良いか分からないんだ。
久しぶりに学校以外の所で会う……この彼女に。
「……あっ、麻結さん」
ゆったりして特に話そうとはしない麻結さんと対照的に話題を探していた俺は、そういえばと一つ思い出して彼女の名前を呼ぶ。
「ん……どうしたの?」
麻結さんは呼ばれてすぐ、そんな風にこっちを見て俺の言葉を待ってくれる。
そんな麻結さんに向かって、俺はなんとなく気になっていた事を聞いてみた。
「あの最初に送ってくれた写真、何故か見れなくて……何の写真だったんですか?」
俺の言葉に……麻結さんは少し驚いた様に目を開いたものの、すぐにいつもの調子に戻って答えた。
「あぁ……それは、なんて事は無くて。ただ猫の……」
麻結さんが言いかけた時……大きな破裂音と共に、空一面に花火が咲いた。
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